南予の住民はこれまで、大量発生するガンガゼウニを駆除してきたが、漁場環境の改善を任された清水さんは「愛南にすむ生き物だから、殺すのではなく活用できないか」と愛媛大と協力。2018年から4年ほどかけて食用化を目指した。
 「餌にお金をかけたくない」。ブロッコリーの芯を与えて臭いを取り除き、日本一の生産量を誇る河内晩柑「愛南ゴールド」で風味付けした。いずれも農協などから廃棄される物を無償で譲り受けた。籠にガンガゼウニと餌を入れ、1カ月ほど海に沈めると、身が詰まったウニに成長する。
 ほのかにかんきつの香りがするウニは、一般のウニより低糖質。同町水産課の長田岩喜さん(60)は「私のような痛風持ちにも優しい」とアピールする。一方、味が淡泊な課題があるといい、最近は海藻のヒロメを食べさせ、ウニらしい濃厚な味に仕上げる実験を始めた。
 ウニッコリーは地元の漁業者2人が育てている。昨年12月に本格出荷を始めたが、流通量は少なく、一般販売はしていない。観光施設「ゆらり内海」(同町)はウニ丼として提供しているが、深堀毅代表(58)は「すぐ売り切れ、幻の食材になっている。もっと量があれば」と期待する。
 町は地域おこし協力隊の力を借り、ビジネスモデル構築を目指す。今シーズン(22年11月〜今年5月)は昨シーズンの3〜4倍に増やし、1パック70グラム入りのウニッコリーを300〜400パックほど出荷する予定。清水さんは「愛南にはウニ以外にもマダイやカツオなどおいしい物がある。ぜひ町に来てほしい」と話す。