◆エッセイスト小笠原洋子さん「プロの独身」満喫

 エッセイストの小笠原洋子さん(72才)は「プロの独身」と呼べる女性のひとり。小笠原さんは大学卒業後に学生時代の友人と結婚したが、30代で離婚した。

「大家族に生まれ育ち、子供の頃から愛情の圧迫を感じて、ひとりになりたいという願望が強かったのです。成り行きで結婚してからも何かに縛られているという感触がつきまとい、離婚して、“やっとひとりになれた”と思いました」(小笠原さん・以下同)

 離婚後は画廊や美術館の学芸員として働いた。住まいは実家の土地を売ったお金で分譲の団地を買ったが、65才で手放して賃貸の団地住まいに切り替えた。現在は東京郊外の緑豊かな地域で、月約3万円の年金暮らしを満喫する。

「月10万円前後の生活費は1日1000円をめどとして、あとは貯蓄を取り崩しています。節約が欠かせずお金の不安はありますが、あまり窮屈にならないよう心がけています。

 私はもともと人間づきあいが苦手なので、ひとり暮らしは苦になりません。老後の仕事は生活を楽しむことだと思っています。毎日一度は緑の中を散歩して自然と触れ合い、いまの季節に森や草花の中にいると、本当にエメラルドの宝石に囲まれた感じがします。朝起きるときに、今日は何を食べよう、何を着ようと考えることも楽しんでいます」

 若かった頃は、海外に一人旅にも出かけた。いまは質素な暮らしが心地いいと語る小笠原さんは、気分転換に団地や自治体が開催する無料の講座やイベントに参加して地域住民と触れ合う。ひとりを楽しむ術を彼女はよく知っている。

 生涯独身や離婚した女性はもちろんだが、たとえ結婚していても、女性の老後は夫の死によってひとり残されるケースが多い。いざ、ひとりになったときのために「シミュレーション」をしておくことが大切と小笠原さんは言う。

「老後にひとりになった女性が寂しい思いをしないように、家族がいるうちにひとりになったときのシミュレーションをしておくべきです。老婆心ながら、一人旅をしておけばいいと思います。

 また、わが家は台風がきたときや自分が倒れたとき、事故に遭ったときなどの緊急連絡先を押し入れの壁に貼ってあります。緊急時に何をすればいいかのメモも手製の危機管理ボックスに入れてある。何か起きた際、そこを探せば慌てずにすみますから」

 やはり大切なのは事前の備えのようだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9755a5f9ec9bbf588d2f35e8a0105a2c05a8ab4b