多くの外国人同様、初めて見たときは日本のお笑いの面白さが全く分からなかった。「スリッパで頭をひっぱたくだけで笑いがとれるこの国ってすごいね〜」と、軽く蔑視していた。

「コメディー」の頂点、アメリカから来た僕にとって、「お笑い」が解せなかった。一発ギャグもそう。リズムネタもそう。熱湯風呂に入ったり、熱々のおでんを食べたり、乳首を洗濯挟みで挟んだりするだけで笑いをとる「リアクション芸」もそう。どれもさっぱり分からなかった。ダチョウ倶楽部さん、ごめんなさい!

アメリカのコメディアンはテレビで、その番組の放送局やその親会社、スポンサーを含めた企業も、商品も、政治家も、さらに芸能人をもどんどんネタにする。これが当たり前。
権力者やセレブを突き落とすのが芸人の仕事だとされているから。体制に歯向かう芸風は健全な民主主義のためになる。愛国者こそ権威をこき下ろす! まあ、少し大げさだけど。

日本では風刺ネタはほとんど出てこない。なぜだろう? それは目に見えない一線を越えたときの制裁が、目に見えるからだ。企業が怒ると広告が消える。政治家が怒ると、同じ政党の政治家も取材に応えないことがある。この仕返しは当の番組だけでなく、その放送局の全番組まで対象になり得る。