スイス鉄道メーカー、世界3強に迫る大躍進
世界最大の鉄道見本市で実力を見せつけた

東洋経済オンライン 10月11日(火)
http://toyokeizai.net/articles/-/139266

過去数年における世界の鉄道メーカーの変化は著しい。
つい最近まで鉄道メーカーのトップに君臨していたのは「ビッグ3」と呼ばれる3社だった。
21世紀に入り再編が進む中、
鉄道メーカーはヨーロッパをベースにしたボンバルディア、アルストム、ジーメンスの3社にほぼ集約され、
一時はこの3社だけで全世界のシェア50%近くを占めるまでになった。

しかしながら「ビッグ3」が君臨する時代も長くは続かず、
中国メーカーの台頭により、2012年にはトップの座を中国の2大メーカー、
中国北車集団と中国南車集団(いずれも当時/現在は両社合併し中国中車となる)に明け渡した。
ビッグ3はその後塵を拝し、ジーメンスに至っては業界7位まで転落した。

■見本市に一挙6車種を展示

そんな中、派手さこそないものの、堅実な製品で着実に知名度を上げてきたのが、スイス発祥の鉄道メーカー、シュタドラーだ。
2012年の時点で、すでにジーメンスを抜いて業界6位となり、その存在感を示していたが、
今年9月にベルリンで開催された世界最大の鉄道見本市、InnoTrans(イノトランス)を見て、その存在感の大きさをあらためて見せつけられた。

何しろ、屋外展示だけで6車種、中速車両(最高速度250キロ以下の車両で、250キロ以上の高速列車と区別するために生まれた新しいカテゴリー)から
トラム、貨物用機関車までの豊富なラインナップを展示していた。
これはジーメンスの7車種に次ぐもので、アルストムは2車種、ボンバルディアに至っては展示無しというお寒い状況の中で気を吐いていた。

シュタドラーは、エルンスト・シュタドラーによって1942年にチューリヒで創業、74年の歴史を持つ。
当初はバッテリーやディーゼルを動力源とする小型機関車の開発を行なっていた

1962年にスイス北西部のブッスナンクへ移転、組み立て工場が建設される。
ただし、この当時はまだ、本格的な鉄道車両メーカーとして確立しておらず、旅客用車両の製造も行なっていなかったが、
1984年より旅客用車両の製造が始まり、スイス国内の中小私鉄向けにワンオフ車両を(量産ではなく、各私鉄向けにカスタマイズして少量生産)製造していた。

転機となったのは1989年、起業家で政治家でもあるペーター・シュピュラー氏は銀行から500万スイスフランを借り、
18人の従業員と共にシュタドラーを買収、ここから同社のサクセスストーリーが始まる。
その後同社が開発した、初のモジュール式量産鉄道車両のGTW2/6が1995年にデビューすると、これが爆発的な人気を博した。
GTW2/6は、用意されたいくつかのモジュールを適宜組み合わせることで、
車両の長さや動力方式(電気・ディーゼル双方に対応している)に至るまで、
各鉄道会社の要望に応じた車両が低廉な価格で製造できるという画期的なものだった。

(続く)