【輸出】 世界を走る日本の車両 【仕様】
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今話題の700Tや中国版E2を始めとして北米各都市向けLRT&地下鉄、南米各国の都市向けEC、
東南アジア各国向けDC、豪州で走る振り子特急、パナマ運河の曳舟用ラック電機などなど、
世界中で活躍する日本製車両についてのあれこれを語ろう。
日本の都市鉄道、なぜか「海外輸出」がうまく行かない「3つの理由」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/96907
海外展開への3つのハードルとは2022.07.04川辺 謙一 国際鉄道連合(UIC)が2020年に発表したデータによると、
世界の年間旅客鉄道輸送人員のうち24%を日本が占めている。 つまり、世界で1年間に鉄道を利用する人のうち、
およそ4人に1人は日本の鉄道を利用しているのだ。 そのような日本で、とくに鉄道が発達しているのが東京圏であり、
日本全体における年間旅客鉄道輸送人員の6割以上を占めている。 つまり、東京圏ほど鉄道が発達した都市圏は他にないのだ。 それゆえ東京圏の鉄道では、世界に類を見ない
大量高密度旅客輸送を日々実現している。 しかもそれを支える列車たちの動きは秒刻みで管理
されており、高い定時性(時間の正確さ)を誇っている。 となれば、日本、とくに東京圏で培われた都市鉄道のハード
やソフトの技術やノウハウを海外に売り込めるのではないか。 ところが、そのことを鉄道関係者に聞いてみると、
彼らは首をひねるばかりで、縦に振ろうとはしない。 昨年投稿した記事「日本の新幹線、なぜか『海外輸出』がうまく行かない『3つの理由』」
でも記したように、そもそも日本の鉄道があまりにも特殊すぎるがゆえに、
新幹線だけでなく、都市鉄道でさえも海外展開には根本的なハードルがあるようだ。 それでは、都市鉄道の海外展開のハードルとなる要因とは何か。 彼らは、その要因は多数あり、複雑に絡み合っていると言う。 ただ、それらをあえて整理して、おもな要因だけをピックアップすると、
どうも以下の3つが大きく関係しているようだ。 (1) 規格の壁がある
(2) 鉄道員の質が異なる
(3) 足並みがそろわない 結論から言うと、(1)は「ハード」、(2)は「ソフト」、
(3)は「ビジネス」のハードルだ。 (1)の「規格の壁がある」は、先ほど述べた通り「ハード」の問題であり、
寸法や材料から、施工方法、検査方法までを定めた「技術的な標準(規格)」
のちがいを指している。 前出の記事でもふれたように、日本の鉄道が長らく採用してきた規格
(以下、日本規格)は、日本固有のものであり、世界の多くの国々が
採用している国際規格とはかけ離れている。 もちろん、現在はそのギャップを埋める
ための協議が日本国内で行われている。 これから都市鉄道を導入しようとしている国々にとっては、
導入実績が多い国際規格の方が魅力的だ。 日本からODAのような経済援助を受けることがなければ、
わざわざ日本規格を導入する理由は乏しい。 こう書くと「日本のハードならではの強み
もあるのでは?」と思う人もいるだろう。 たしかに東京圏の都市鉄道は、冒頭で述べた通り、
世界で類を見ない大量高密度旅客輸送を実現しているので、
そこに強みがあるように思える。 ところがある鉄道技術者は、「日本の都市鉄道のハードには
国際的な優位性があまりなく、技術的にもとくに優れた部分
があるとは言いがたい」と言う。 別の鉄道技術者は、「日本の都市鉄道に魅力を感じる国はあるだろうが、ハードの製造
や建設、メンテナンスにかかるコストが高いすぎることがネックになる」と語る。 たしかに日本の都市鉄道で豊富な実績があっても、
高コストとなれば、それは敬遠される理由になりうる。 (2)の「鉄道員の質が異なる」は「ソフト」
の話であり、鉄道の運用に関わる重要事項だ。 一般にはあまり知られていないが、日本では
他国よりも鉄道員の質が高いという事実がある。 日本の鉄道では、国土交通省が定める訓練を受けた「特別な人」が、
列車の運転士や車掌として乗務しており、その状況を熟知した指令員
が列車の運行管理をしている。 つまり、各分野のスペシャリストがそれぞれの
現場におり、輸送を支えているのだ。 日本の都市鉄道における電車や運行管理システムなどは、
「特別な人」が操作することを前提として設計されている。 このため、専門性がきわめて高くなっており、列車運行を
秒刻みで管理するという「職人的な芸当」ができるのだ。 鉄道員の社会的地位は日本ほど高くなく、充分な訓練を
受けていない人が列車の運行に携わることが多々ある。 つまり、日本の鉄道員とくらべるとアマチュアに
近い「普通の人」が、鉄道現場を支えているのだ。 このため、海外の都市鉄道における電車や運行管理システムなどは、
基本的に誰でも理解して操作できるように設計されており、
それらの操作を明確に示したマニュアルが存在する。 つまり、日本の鉄道システムとは設計思想がまったく異なるのだ。 筆者は、日本の都市鉄道の運転士や車掌、そして列車の運行管理
を行う指令員を取材したことがあり、彼ら彼女らの「仕事」に
対する意識の高さに驚かされたことが多々ある。 また、その経験を通して、日本の鉄道は「技術力」よりも「現場力」、
「ハード」よりも「ソフト」によって大きく支えられていることを
ひしひしと感じてきた。 その反面、「日本における鉄道輸送は良くも
悪くも日本でしかできない」とも感じてきた。 なぜならば、彼ら彼女らの「仕事」では、マニュアルに記されたこともあるとはいえ、
先輩の背中を見ながら経験を通して学ぶことも多いからだ。 言い換えれば、日本の鉄道は、彼ら彼女らによる「真摯に
学ぼうとする努力」なくして回らない輸送システムなのだ。 日本には、「仕事」に対する特殊な価値観があり、
それを受け入れ、勤勉に働く労働者が大勢いる。 そうでなければ、「職人的な芸当」を必要とする鉄道輸送は実現できない。 筆者は鉄道現場を取材するたびにそのことを感じてきた。 それゆえ、日本で実現している都市鉄道の運用を、
鉄道員の社会的地位や職業観が異なる国で実現
するのは、かなり難しいと筆者は考える。 念のため鉄道関係者にも聞いてみたが、答えは同じであった。 (3)の「足並みがそろわない」は、都市鉄道を他国
に売り込むという「ビジネス」における大きな問題だ。 日本政府は、成長戦略の一環としてインフラ輸出を掲げ、長らく鉄道
の海外展開に力を入れてきたが、その成果が出ているとは言いがたい。 たとえば都市鉄道は、新幹線とちがい、複数の国々に海外展開をした実績があるものの、
新興国に積極的にアプローチしている欧州勢や中国勢に対して苦戦を強いられている点は否めない。 ある鉄道技術者は、その理由を「経験が豊富なプロジェクトマネージャーがおらず、
コンソーシアム(共同事業体)の動きがバラバラだから」と指摘する。 つまり、国が大きく旗を振る一方で、その下で旗を振る人が
不在であり、コンソーシアムを構成する鉄道事業者やメーカー、
建設会社、商社などの足並みがそろっていないのだ。 この背景には、日本と海外における「パッケージ」
の取りまとめ方のちがいがあるようだ。 ここでいう「パッケージ」とは、車両や施設の発注・設計・部品の調達や、
運行、保守などをひとまとめにしたものを指す。 日本の鉄道では、JRなどの鉄道事業者が頂点となり「パッケージ」を取りまとめる。 つまり、車両メーカーや部品メーカー、建設会社などは、
鉄道事業者の下請けとして受注し、納品する立場である。 いっぽう海外の鉄道では、商社が頂点となり、
車両や建設の幹事会社が「パッケージ」の詳細を取りまとめる。 このため、先ほどのメーカーや建設会社が商社を通して鉄道事業者
に商品を提案し、鉄道事業者がそれを確認して発注する。 つまり、プロジェクトの旗振り役は、日本国内では鉄道事業者
であるのに対して、日本から海外に輸出する場合は商社なのだ。 ところが、日本では技術をコントロールできる商社が少なく、鉄道事業者
やメーカー、建設会社などのサポートを必要とする場合が多い。 これが、日本勢の足並みがそろわない大きな要因であるようだ。 また、電車などの「仕様」の決め方も、日本と海外では大きく異なる。 日本の鉄道では、「仕様」に関して明文化されていない部分が長らく多かった。 このため鉄道事業者とメーカーなどの受注者は、互いの信頼関係や
過去の実績などに基づいて「あうんの呼吸」で「仕様」を決めていた。 いっぽう海外の鉄道では、必要な「仕様」を厳密に決め、
「仕様書」と呼ばれる膨大な書類にして明文化する。 このため、製品や設備などに少しでも「仕様書」と
合致しない部分があれば、受け入れを拒否される。 日本の鉄道とは「仕様」に対する考え方が根本的にちがうのだ。 なお、近年は日本でも「仕様書」を作成する鉄道事業者が増えてきた。 この背景には、欧州から日本の鉄道市場が閉鎖的であるという批判を受け、
国土交通省が鉄道事業者を指導し、国際入札に対応させたことが関係している。 ここまで述べた「パッケージ」や「仕様」の考え方のちがいは、
あくまでも国内外の鉄道ビジネスの相違点の一部に過ぎない。 ただ、これらの日本流のやり方が海外で通用せず、
海外展開のネックになっていることは確かなようだ。 以上をまとめると、これまで紹介した(1)(2)(3)がネックとなるので、
日本の都市鉄道を海外に売り込むのはかなり難しいことになる。 日々鉄道と向き合う当事者にとっては、それが本音なのだ。 つまり、都市鉄道の海外展開の現場では、それを推進
する政府の思惑とは真逆のことが起きているのだ。 政府が現場との認識のギャップを埋める
努力をしなければ、旗振りは徒労に終わる。 レス数が1000を超えています。これ以上書き込みはできません。