創刊142年目にして朝日は新聞社の屋台骨とも言える「ひと」のリストラに踏み切り、経営失敗の責任を取って前任の社長が退いた。

長期的な発行部数の低落と大赤字で苦境に陥った朝日新聞は、21年1月、選択定年という名目で希望退職者の募集を始めた。
期限は2カ月後の同年3月半ばまで。45歳以上の社員が対象で、目標は「100人以上」と経営部門は説明していた。
約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定という。経営部門の幹部は社内向けに何度かオンラインで説明会を開き、
具体的な退職金の上積みや退職後の再就職先の斡旋などの条件を提示しつつ、繰り返し早期退職を促した。

ボーナスの4割カット、給与の1割削減、各種手当の廃止、福利厚生の縮小……。
経営トップが次々と繰り出す厳しい通告に労働組合は抵抗したものの、ストライキを打つこともなく押し切られた。

職場では、特ダネ競争に欠かせない「夜討ち朝駆け」のためのハイヤー使用が一部例外を除いて禁じられ、編集作業を手伝ってくれた多数のアルバイト学生が社内から消えた。
出張手当が大幅に削られ、文房具の使用にまで注文が付くようになった。そうした変化の末にやってきたのが、早期退職者の大量募集だ。

朝日新聞の部数は2015年に700万部近くに、18年には600万部を割り込んだ。21年9月には500万部を割って468万部となった。
業績もすさまじい勢いで悪化した。最も高かったのは12年3月期の4762億円(年度決算ベース、連結売上高)。10年後の21年3月期は2938億円と、およそ4割も減っている。