「おひとりさま」で幸せな日本人の不思議
欧米はキリスト教を規範とした強固な「パートナー形成圧力」がある
https://president.jp/articles/-/28768
山田昌弘 (中央大学文学部教授)

欧米は結婚は不要だけれども、幸せに生きるためには「親密なパートナーが必要な社会」です
(キリスト教元にした法的結婚を取らない、事実婚も多い)
それに対して日本は、配偶者や恋人のような決まったパートナーがいなくても、なんとか幸せに生きられる「おひとりさま」社会になったというのが、私の結論です

欧米社会には強固なパートナー形成圧力があるわけですが、それは端的に言えば「パートナーが存在しないとみっともない (人間的に問題ありと見なされる)」という意識です
けれども日本では「ちゃんとしたパートナーでないと、逆にみっともない」となるわけです
その違いが大きな社会の違いなのです

たとえば、経済的にやっていく仕組みの一つが「パラサイト・シングル」です
ただこれは経済問題の先送りに過ぎないので、20〜30年後には破たんが見込まれますが、収入が低くても結婚しなくても、親と同居していれば経済的になんとかやっていけるという社会になっています

そして、パートナーなしで親密性を満足させる仕組みもいろいろなところで整っています
母親や同性の友だち、ペットといったパートナー以外の「存在」とのコミュニケーションで、女性は親密性が満たされています
男性ならキャバクラやメイドカフェといった「場」で、いろいろ話したり体験をシェアしたりするという親密性を市場から買うこともできるわけです

恋愛関係=ロマンティック関係はバーチャル化していて、マンガなどの二次元、アニメのキャラやアイドルといった人たちなどで満足させています
性的な満足についても風俗店やポルノなどがあります
最近では女性向けポルノが流行っているという話も聞きますし、そういうところで男性も女性も欲求を満たすことができるわけです

日本人は、親密性を市場から買うことに抵抗がないということも、親密性を満足させる装置が整う理由と言えるでしょう