023/05/14 9:00

もうくどいほど言われているが、現在の日本人の平均賃金は、世界の主要国のなかでは低いほうに位置する。本稿執筆時点でのOECDの最新データ(2021年)では、加盟38カ国中24位である。

次の[図表1]にあるように、もっとも平均賃金が高いのはアメリカで、7万4738ドル。以下、ルクセンブルク、アイスランド、スイスと続く。日本はというと、ずっと下がって、韓国や中東欧のスロベニアやリトアニアより下で3万9711ドル。アメリカの約半分である。

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■もはや「先進国」でも「中進国」でもない

OECDの平均は5万1607ドルなので、日本はもはや「先進国」でも「中進国」でもなくなってしまった。

順位で言うと、1991年には13位(当時の加盟国は24カ国)、2000年に18位、2010年に21位、2015年に24位というように年を追うごとに順位を落としてきた。

[図表2]は、G7各国の平均賃金の推移(1991年~2021年)のグラフである。1991年当時、日本の平均賃金は3万6879ドル。アメリカの4万6975ドルよりは低かったが、英国やフランスよりも高かった。

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しかし、その後の2021年までの30年間で、日本の平均賃金はわずか3000ドルほどしか増えなかった。それに対して、アメリカは約2万7000ドル、ドイツ、カナダ、英国、フランスは1万ドル以上増えている。これを伸び率で見ると、アメリカが53.2%、英国が50.4%となるが、日本はわずか6.3%だから、この30年間、時間が止まっていたのと同じだ。

これもすでにさんざん言われているが、なぜ、日本だけが賃金が上がらなかったのだろうか?

その答えは、いたってシンプル。それは、日本だけがほとんど経済成長をしなかったからだ。

経済成長は、人口の増加、労働生産性の伸び、イノベーションなどによってもたらされる。この30年間あまり、日本ではこの三つとも起こっていない。日本は人口減に陥ったうえ、労働生産性も伸びず、イノベーションも起こらず、ただ漫然と同じ日常を続けて、世界から取り残されてしまったのである。
https://president.jp/articles/-/69366