「スプレーで目を狙った!やることしか考えてなかったですから!こういうふうに、2回か3回、スプレーをかけたんです。でも、こうやって押さえつけられたから、まずい、私の方がやられると、包丁を握って……!」

証言台の前に座り、身振り手振りで興奮気味に語る被告人。話が途切れない。「順を追って聞いていきますからね」と弁護人がたしなめたが、その後も変わらず、まるで自分の行為を誇るかのように語り続けていた。

被告人は逮捕当時76歳。昨年(2021年)の夏に、東京西部の住宅敷地内にヘルメットを被って侵入し、40代の男性に催涙スプレーを噴射したうえ、持ってきていた包丁で男性の腹部を刺したという殺人未遂と銃刀法違反の罪で起訴されていた。被害者は被告人の娘婿。ふたりは親族である。

いったいなぜ娘婿にそれほどの恨みを抱いていたのか。今年3月に東京地裁立川支部で開かれた裁判員裁判では、自転車をめぐる“一方的な思い込み”が根底にあったことがわかった。(ライター・高橋ユキ)