前スレ70の続き
特別室のドアを開けると、ピンク色のパジャマにライトブルーのカーディガンを羽織った少女がベッドに上半身を起こして出迎えてくれた。
彼女はコクンと軽く頷いたが、その表情は無表情であった。
「いっちゃん、今日はご機嫌だね。天気もいいから後でお散歩行こうね。」
ユハネは汐里たちには見せない穏やかな笑顔でいっちゃんに話しかけた。
「あら、お絵描きしたんだ。これはドクターイエロー?上手に描けたね♪」
いっちゃんが描いた絵は黄色いかたまりを塗りつぶしただけの、お世辞にも絵とは言えないものであった。
「汐里?大丈夫?」
異変に気づいた鈴が声を掛けた。汐里の目からは涙がボロボロと溢れ落ちていた。
「汐里、今更泣いてどういうつもり?こうなってることは知ってるでしょ?泣いたらいっちゃんが治るとでも?それとも可哀想な汐里"ちゃん"に同情でもしてもらいたい?」
「あのさあ、さっきから汐里に突っかかってどういうつもり?」
「鈴ちゃん怒らない、スマイル♪」
レイナの静止に聞く耳を持たずに鈴は怒りをユハネにぶつける。
「汐里はうちの仲間だ。これ以上汐里を馬鹿にするんならただじゃ済まないよ!」
「違うの、私が悪いの…」
「はいはいw美しい友情ごっこですこと。私は"仲間はずれ"ですか。」
「うるさい!いつも斜に構えて1匹狼気取ってたくせに、都合の良い時だけ被害者面すんじゃね!」
「だから違うの!私が、私が悪いの…」
怒りで我を忘れた鈴がユハネに殴りかかろうと拳を振り上げた。
鈴の腕を引っ張るいっちゃん。頭をブルンブルン振って必死に止めようとしていた。
その力は弱かったが、必死に止めようとしたいっちゃんの"気迫"に推される鈴。
「なんだよ…みんなして。うちは悪くないのに!」
いたたまれなくなり病室を飛び出す鈴。鈴を追いかけて汐里も病室から出ていった。
安心したいっちゃんがユハネを両手でギュッと抱きしめていた。
「ごめんねいっちゃん。びっくりさせちゃって。」
「ユハネ、今日のあなたはちょっと変だよ。鈴とはともかくとして、汐里にあんなキツくあたるなんて。何があったの?怒らないから話してくれないかなあ…」
レイナが微笑みを浮かべながらユハネに問いかけた。レイナの目は笑ってない。こうなった時のレイナは誰にも止められない。
「わたしが説明するわ」