日本政府は、IWC=国際捕鯨委員会から脱退し、ことし7月から商業捕鯨を再開すると発表した。

「我々からすると…神様みたいなもんですよね」
記者団にそう話したのは、和歌山県太地町の三軒一高町長。
直前に面会した二階幹事長のことをそう表現したのだ。
長年、商業捕鯨の再開を切望してきた三軒氏は、脱退は地元選出の二階氏の尽力があってこそと強調する。

その二階氏。
「IWCは組織が変質し、反捕鯨国は鯨に依存する漁業者の暮らしを一顧だにせず、商業捕鯨を再開するためには、IWCから脱退するしかない。今回の決定は、商業捕鯨の再開を待ち望んでいた全国の願いをかなえるものだ」

日本ではクジラの肉はタンパク源として重宝され、1960年代には「商業捕鯨」は最盛期を迎えた。
しかし、シロナガスクジラなどの貴重なクジラが減少したとして、次第に国際的な批判が高まり、1982年にIWCで「商業捕鯨」の一時停止が決議された。
日本は異議申し立てをしたものの1985年に取り下げ、1987年からは資源量や生態調査などを行う「調査捕鯨」を行ってきた。
この「調査捕鯨」で捕獲された肉が、「調査副産物」として日本国内で流通しているのだ。
また、IWCが管轄しないツチクジラなど小型のクジラに限って捕獲する沿岸の捕鯨が、太地町など一部で小規模に行われている。

ひとつめの「判決」だが、これは2014年にオランダ・ハーグにある国際司法裁判所が言い渡したものだ。
先に書いたように、「調査副産物」としてクジラの肉が市場で売られていること、それに捕獲される頭数が年間数百頭に及んでいることなどが理由だった。
判決では、日本のそれまでの「調査捕鯨」は条約で認められている科学的な調査には該当しないと判断を示し、このままの形で捕鯨の許可を与えることはできないと言い渡した。

そこで、声をあげたのが二階氏だった。
「何をボヤボヤしているのか。党をなめとるんじゃないか」
それが号砲になり、この日以降、二階氏を中心に議員連盟のメンバーは、IWC脱退に向けた取り組みを加速させたという。

共産党の小池書記局長は「アメリカのトランプ大統領のまねみたい」と揶揄した。
「伝統的な日本の食文化の1つであり、科学的な根拠に基づいて、厳格な管理のもと、引き続き捕鯨は行われるべきだ。ただ、『主張が受け入れられないから脱退する』という対応は、国際的な理解を得られないのではないか」

そもそも、クジラの肉の流通量は減っている。
水産庁によれば、1962年度の23万3000トンをピークに減少が続き、商業捕鯨を中断すると3000トンにまで減った。
IWCのように主要な国際機関から日本が脱退するのは極めて異例だ。

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/13154.html