石川県立金沢西高校の野球部員だった松平航汰さん(当時15歳)が2017年、部活動中に川に落ちたボールを拾おうとして転落し、死亡した事故を巡り、
両親が県に慰謝料など約5450万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、金沢地裁であった。
小川弘持裁判長は指導教員らの注意義務違反を認め、県に約2300万円の支払いを命じた。
判決によると、17年11月5日、松平さんは野球部の練習試合中、川に落ちたホームランボールを拾おうと岸辺のガードレールを乗り越え、足を滑らせて川に転落。2日後に死亡した。
事故を巡っては、県警が業務上過失致死容疑で監督ら当時の指導教員3人を書類送検し、金沢地検が19年に不起訴(嫌疑不十分)にしていた。
裁判で両親側は、川に落ちたボールの回収をやめさせたり、危険な取り方をしないよう指導したりしていれば事故は起こらなかったと主張しており、監督らの注意義務違反の有無が主な争点となった。
小川裁判長は判決で、川に落ちたボールを回収する際、ガードレールを乗り越えないよう監督らが指導していなかったとし、「注意義務を尽くしていれば事故を回避できた」と指摘。
「注意義務違反と松平さんの死亡結果との間には相当因果関係がある」と認めた。
一方、監督らがボールの回収を諦めた生徒を叱責するなどしたことはなく、事故当時は「危険を冒してまで回収しなければならない状況ではなかった」と認定。
高校1年生であれば転落の危険性は予見できたとした上で、「ガードレールを越えて回収しようとした松平さんにも一定の落ち度がある」と述べ、損害額の3割を過失相殺した。
判決後、金沢市内で記者会見した父親の忠雄さん(52)は、監督らの注意義務違反が認められたことは評価したものの、松平さんに一定の過失があったとした点については、
「主張が全面的に認められると思っていたので残念だ。力になれず、息子には謝るしかない」と悔しさをにじませた。
県教育委員会の北野喜樹教育長は「判決内容を精査し、弁護士とも相談の上、適切に対応していく」とのコメントを出した。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20221210-OYT1T50056/