歓喜丸(かんきがん):また歓喜団と称す。酥、麺、蜜、薑(はじかみ)等を和して製したる食物の名。
「大般涅槃経巻39」に、「酥、麺、蜜、薑、胡椒、蓽茇、葡萄、胡桃、柘榴、桵子、かくの如きを和合して歓喜丸と名づく」と云い、「大智度論巻93」に、「百種の薬草、薬果をもて歓喜丸を作り、
これを百味と名づく」と云い、「大日経疏巻7」に、「歓喜丸は応に蘇を以って諸餅を煮、糅うるに衆味及び三種の辛薬等を以ってし、種種に荘厳ならしむ」と云い、また「十誦律巻35」には、胡麻歓喜丸、石蜜歓喜丸、蜜歓喜丸等の名を出せり。
密教にては、これを曼荼羅の諸尊に供え、また歓喜天の供物となせり。「大使呪法経」に、蘇油を以って歓喜団及び蘿蔔等の菓を作り、銅器に盛りてこれを毘那夜迦に供養すと云い、
大聖歓喜双身大自在天毘那夜迦王帰依念誦供養法に「此の像の前に小円檀を作り、餚膳、飲供、酒薬、蘿蔔、歓喜団等を設けて迎請す」と云えるこれなり。
またこれを他の蘿蔔及び酒の二種と共に三毒の煩悩を表すとし、これを供養して三毒を転ずるの意を示せるものとなせり。
即ち「乳味鈔巻9」に、「団は貪煩悩なり、智度論第十七巻にこれを食するものは、媱食熾盛なる因縁を挙ぐ。蘿蔔は瞋煩悩なり、その味辛きが故に。
酒は癡煩悩なり、飲めば輒ち迷乱するが故に。蓋し今は三毒即ち三転の義を明す、故にこれを用うるなり」と云えるその義なり。
我が邦にてはこれを団喜、或は御団と称し、信者に与えて食せしむれば、即ち所願成就すと伝えつつあり。
また「百喩経巻3五百歓喜丸喩」、「大宝広博楼閣善住秘密陀羅尼経巻中註」、「覚禅鈔聖天の巻」等に出づ。