アメリカの鉄道電化に関する資料は本当に少なくて、以降は推論が多く含まれます。あくまでも傾向です。

架線の支持方法は集電装置により左右されます。
ポールは上下動の振り幅は許容しますが左右については、厳しいです。しかしパンタグラフはこの点が逆で、上下動に厳しく左右については制約を受けにくい。
パンタグラフのほうが可動部の重量が大きいためでもあります。
アメリカでは架線の張り具合が全般に、ユルユルが好まれたらしい。
直線区間で垂れ下がる架線に追従するためパンタグラフの上昇力は弱く、たるんだ架線が外れないようにシューも長くなる。
そうなると全体が大型化して可動部の重量も増すという悪循環。スピードアップとなるとポールのほうが可能性が出てくるだろう。

日本のパンタグラフが途中から現在あるように小さくなるのは、特に国鉄線にポール時代の電化区間の実績がほとんどないから。
最初からパンタグラフに最適な架線の張り方から入ったので、ポール電化だった私鉄も国鉄のやり方が常識だと思って頑張らざるを得なかった。
(例によってローカル線に対して過剰な設備投資の可能性が高い。ポールは使いようによっては決して粗悪な方法ではない。)

アメリカでは架線改良の意義が東海岸幹線のような例外以外に理解されなかったので、パンタグラフも普及せず導入例も大きな装置を強いられた。
PEなど大型電車の五両編成がポール集電で疾走して何の不都合もないし、エレクトロライナーもポール集電でした。
これら速度を出す区間ではポールとカテナリーの組み合わせが見られました。日本では導入例は多分ありません。
ポールは外れやすいというのは、叡電のようなケースにさえパンタグラフ導入を強制された日本だけの都市伝説の類ではないでしょうか。
エレクトロライナーなど連接部にポールありますよ。

以上が、アメリカに特有の大型パンタグラフの背景説明です。
いわゆるディスコン棒ですが、大型でしかも上昇力が緩いパンタグラフを人力で上げられるのか。
詳細なスペック表を見ても、パンタグラフの機構については全くと言ってよいほど判りません。型番さえ判らない。
可能性としては巨体を途中までエアシリンダーで上げて重量バランスをプラマイゼロに取り、残りは弱いバネの力を借りていた可能性が最も高い。

PEのポールがエア作動式なんですよね。サイダムのブラスモデルには独特の形状のポールがついており、空気配管が屋根上まで伸びています。
日本のようにバネ式(機械式)のほうが簡単だろうし、採用理由は謎のままです。
シリンダー内の気圧調整で、緩んだ架線区間とカテナリー電化区間に対応させていたのかもしれません。