「タイム感」

仮に一小節の一拍を96分割し、その96×4拍=384を
一つの尺度とした場合、384の中で繰り広げられる8ビート
(あるいは16ビート)の譜割において、四分音符による
4拍が「0(384)、96、192、288」あるいは8分音符8拍が
「0(384)、48、96、144、192、240、288、336」で刻まれるのが
「ノーマルなタイム感」であるが、ドラマー個人において
少々のバラ付きがある。ボーナムの手癖にあってはそのタイム感が
他のロック・ドラミングに比して極端にクセが強い。
8ビートでも16ビートでも「ややシャッフル気味に叩く」のが
彼のクセであり、1/4拍を常に「シャッフル気味の5連譜」で
分割しながら叩いている。ボーナムのタイム感に対して、
ギタリストであるペイジのタイム感は明らかに
「走り過ぎ」「モタリ過ぎ」なのだが、その二人のタイム感の差異を
ジョーンズのベースが96分割の4倍強の分解能で
「絶妙なリズム補正」を施すせいで、ツェッペリンの演奏には
比類ないスリリングな「グルーブ感」がもたらされる。
1980年代後半のデジタル・レコーディングの世界では
その一拍に対する分解能を「タイム・ベース」と呼び習わし、
ボーナムのドラミングだけが他のドラマーにないタイム・ベースを
割り振りをしていたため「独特のタイム感」と評価されるようになった。
だが彼のそのタイム感も、ペイジの奔放なリズム感とジョーンズの
異常な分解能があってこそ、バンド独自のグルーブ感として現存しているという訳だ。