■「技は盗む」から教育強化へ

そんななか、大工の正社員雇用や育成など、大工の待遇改善に力を入れているのが、住宅・リフォーム業を展開するハウジング重兵衛(千葉県成田市)だ。

代表の菅谷重貴さん(41)は大工の若者離れについて、大工に対する先入観が大きいとし、「『3K」と呼ばれるような、『きつい』『汚い』『危険』といった労働環境のイメージや、『技は盗むもの』といった職人かたぎに抵抗感を持つ人もいる」と語る。

同社は、若手確保のため、平成30年から職人の正社員雇用をスタート。研修制度も強化し、礼儀やマナー、基本的な知識や技術など約3カ月間、研修などを行ったうえで、親方に同行して現場で学んでいく。

これまでほとんど教えたことも教えられた経験もなかった親方らだったが、「自分の息子だと思うと厳しくしてしまうけど、社長の息子だと思って育てるよ」と受け入れ、会社全体で若手を育てるという共通意識を持った。それが評価にもつながるように、新たに評価制度も設けたという。作業着も、ニッカポッカでなく、デニム地のクールなデザインのものを会社で支給するなど、従来の職人のイメージを一新する取り組みを行っている。

中途採用のほか、毎年1〜3人新卒採用も行っている。平成29年に5人だった職人は、5年10月時点で26人にまで増えた。将来を見据え、大工だけでなく、水道や塗装、電気、トイレやキッチンの交換などの住宅設備など、家づくりに関わる全ての工事をこなす「多能工職人」をめざして育成しており、「自分だけで一棟を建てたい」と意欲を燃やす若手社員もいるという。

菅谷さんは、震災や台風などの有事でも職人の役割は大きいとし、「安定した環境で、手に職をつける楽しさを知ってもらい、職人を目指す人を増やしていきたい」と語った。来年2月には、千葉県内に職人学校の設立も予定しているという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/266b066e19a9bb2966d5869853ab7afc2e079e13