●水樹奈々は「奇形」なのか?
奇形亜種(デミヒューマン)の歴史は人類(ホモ・サピエンス)のそれに比すれば浅い。
だが、変異体としての「寸詰まり」の存在は古今東西を問わず発生が確認されてきた。
近世の記録としては、ソビエト連邦のスターリングラードにおいて異常な身体比率の兄弟の発見(1956年)、米国のニューイングランドにおける手足が異常に短いコリアン家系の発見(1970年)、そして本稿の1980年日本国愛媛県新居浜市における歯科技工士家庭での発生報告があげられる。

本格的な露出が始まったのは、1988年にミズキが芸能界入りしてからである。
高校卒業後路上で暮らしていた所を保護されたその彼女は、演歌調でありながらドスの利いた独特な歌い方(1/f ゆらぎが声に上下2波同時に現れるという、世界的にも数例しかない特殊な声帯)から様々な研究対象とされ、遺伝学上の検査結果、奇形でも健康体であることが確かめられた。
奇怪な身体を持つ歌姫の誕生である。

当時、農林水産省主導による障害者に対する支援計画があり社会に論争を巻き起こした。
芸能活動を積極的に肯定するキングレコード陣営と、遺伝的異常であるから公認は避けるべきとする人権団体との衝突である。
調査が続けられた末に、1998年、彼女は奇異な外観ではあるが健常者であると認定された。

●特色
学術的見地では、「ミズキ・ナナは普通の人間と根本的に異なった構造を持つ生物である事は否定できない」としている。

・通常より短い、動作豊かな手足を持つ。
・片足をもう一方の足と同じ直線上に置きつつ、胴体を前傾させた上で尻を振りながら歌うという、ファッションモデルの「キャットウォーク」を想起させるような一風変わった歌い方をする。
・足の短さが手伝ってか、両手を上げて背伸びをしても、かがんでいる様に見え、一般に「ミズキ立ち」と呼ばれる。
・脚の短さが日常生活に支障を及ぼす事はない。
・普通の人間のようにジャンプすることができ、走り回ることもできる。
・ただし脚の短さから跳躍力は制限される。
・ダックスフントという短脚犬種は背骨に問題を抱えているが、ミズキについては問題の存在を示唆する証拠はない。
・東京移住以降、霊長類研究センターから身体構造の欠陥を指摘する声があり、1998年の声優デビューまで時間を要した。