0151日本昔名無し
2024/04/08(月) 19:10:02.22量産初ロットも特に問題なかった。ほっと、胸をなでおろした。ところが発売して、3週間くらいして、アンプが壊れてしまうという報告がサービス部から次々と入ってきた。その症状は電源スイッチを入れても音が出ない!ということであった。発生場所は関西、それも販売店ではなく、ユーザーのお宅であった。
わたしはすごく責任を感じた。しかし、落ち着いて考えると、60Hz地域、オーディオ店よりも電源事情が良いユーザー宅(オーディオ店では蛸足配線で電源レギュレーションが良くない。)ということは、電源周波数が60Hzでは、50Hz地域に比べて20%も電源トランスの性能は実質的に良くなる。ということは、電源ONするとラッシュ電流が流れ易い。
電気機器は総じて、電源ON時が飛行機の離陸のように、いきなり、フル動作になるので、アンプでは一番危険な一瞬なのである。
原因はどうも電源ON時の発振らしいという推測が当っているようだ。当時は今のように一瞬の動的なふるまいと捉えられるデジタルオシロなどがなかったから、原因分析は困難を極めた。
困っていたところに、ダイアモンド差動回路の開発者のひとりであるTDさんが、協力してくれることになった。TDさんの属している研究開発部は最新の測定器があって、現在のデジタルオシロの原型になるようなニコレー(海外測定器)の波形メモリー分析器があった。
測定してみると、電源ONした瞬間だけ、軽微な発振が何と、パワーアンプ前段のラインアンプに観測されるのであった。この心配は、音質検討時に位相補償のコンデンサの値をぎりぎり小さくしたことを思い出した。
仲間のエンジニアが”気をつけたほうが良い!”とアドバイスしてくれたが、その後、品質保証試験で問題なかったからそのままにしていた。しかし、あとで思えば、その時のテストは50Hzの電源でおこなっていたし、このような最新・高性能な測定器ではチェックしていない。
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