日韓、安保対話5年ぶり再開 レーダー照射再発防止探る

日韓両政府は17日、外務・防衛当局の局長級による「日韓安全保障対話」をソウルで開いた。関係が悪化した2018年以降は途絶えていた枠組みだ。安保政策を担う実務者が話し合う場を再開させ、レーダー照射問題などの懸案が再発しないような方策を探る。

日韓安保対話は外務、防衛当局が防衛政策や北東アジアの情勢認識について意見交換し、相互信頼を高めるための協議だ。1998年からこれまで11回開いてきた。

自衛隊機へのレーダー照射や元徴用工などの問題で関係が悪化した18年からは事実上の凍結状態になっていた。

今回は外務省の船越健裕アジア大洋州局長と防衛省の安藤敦史防衛政策局次長がソウルを訪問した。韓国側は外務省の徐旻廷(ソ・ミンジョン)アジア太平洋局長、国防省の禹慶錫(ウ・ギョンソク)国際政策次長が出席した。

日本の防衛省によると北朝鮮への対応やインド太平洋における日韓、日米韓協力の可能性について意見交換した。その上で、連携強化に向けて緊密に意思疎通していくことを確認した。

松野博一官房長官は記者会見で「レーダー照射事案を含む防衛当局間の課題について議論した」と明らかにした。

韓国外務省は「北東アジアの安全保障環境に対する認識を共有し、安保協力を未来志向で発展させる点で意見が一致した」と発表した。

安保対話は3月の日韓首脳会談で早期再開する方針を確認した。ロシアのウクライナ侵攻や米中関係の悪化で北東アジアの緊張が高まり、安保協力の強化が両国の重要議題になったためだ。

中国の軍備強化や北朝鮮の核・ミサイル開発の進展を踏まえ、日韓はそれぞれ同盟関係を結ぶ米国からも関係改善を促されていた。

日韓は18年の元徴用工問題などを機に対立が深まった。防衛当局間での最大の懸案がレーダー照射問題だった。

防衛省は18年12月、自衛隊の哨戒機が海上で韓国艦艇に火器管制レーダーを照射されたと発表した。日本側は射撃の準備行為と位置づけられるレーダー照射に抗議したが、韓国は事実でないと否定した。

韓国側は19年、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄まで通告した。その後に通告を停止したものの、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が23年に撤回するまで不安定な状態になった。

韓国大統領府は4月13日の北朝鮮によるミサイル発射時、GSOMIAの正常化を踏まえた日本との情報共有の方針を確認した。

日本の政府高官によると18年のレーダー照射に関する事実関係を今後は争わない可能性がある。どちらか譲歩した側の国内世論が反発する公算が大きいためだ。過去の事案を不問にする代わりに再発防止策の検討を進める案が浮上している。

酒井良海上幕僚長は3月の記者会見で「事実認識を根本的に解決するのか、もしくは将来を見通して再発防止という形で合意するのか、いろんなアプローチがある」と指摘した。「関係修復へ歩みを進めていく点で機は熟してきている」とも話した。

日韓両国でレーダー照射という抜けないトゲのような懸案を軟着陸させて協力強化を進めるべきだとの意見が強まってきた。

(ソウル=甲原潤之介、竹内悠介)

日経新聞 2023年4月17日 19:30
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM172DQ0X10C23A4000000/