総務省家計調査で、岡山市が2019~21年の平均で1世帯(2人以上)あたりのパン購入量日本一に輝いた。
食文化論に詳しい美作大短期大学部の藤井わか子教授に理由を尋ねると、
首をひねりながらも「岡山県北部には法事であんパンを配る風習があります」と語り始めた。
https://mainichi.jp/articles/20230105/k00/00m/040/090000c
仏前に参列者があんパンを供え、帰りに喪主が手土産として配る。
「法事パンセット」を販売するパン店もあるほど、津山市や真庭市を中心に「お供え=パン」が浸透しているという。
藤井教授によると、ルーツは小豆の産地であり、あんこを使った『出雲ぜんざい』が有名な島根県とみられる。
葬儀や法要であんこ餅を配る風習が出雲街道を伝って、岡山県北部にも広がったのではと考える。
当初は親戚総出で餅をついていたが手間がかかるため、次第にあんこ入りの「酒蒸しまんじゅう」に変わり、
戦後のパン食文化の広がりとともに手軽に準備できるパンに変化していったとみられる。
それでは岡山市や倉敷市など人口が多い県南部でパン食が広がった理由は? 
藤井教授は「わからない」としながら、こう付け加えた。「『キムラヤさん』を抜きにして語ることはできないでしょうね」
「キムラヤさん」こと岡山木村屋は、あんパンの元祖として知られる「銀座木村屋」で修業した梶谷忠二氏(06年死去)が、
1919(大正8)年に現在の岡山市北区表町に店を開いたのが始まり。当初の看板は「銀座木村屋岡山支店」。
イースト菌ではなく酒の酵母で発酵させる「酒種あんぱん」はたちまち人気を呼んだ。