安倍晋三元首相(当時67歳)が奈良市で演説中に銃撃された事件で、奈良県警が2023年度、警備部の警察官を十数人増員する方針を固めたことが県警関係者への取材で判明した。
警察庁との連絡調整を専門で担う「警衛警護室」(仮称)も新設する。
事件を巡っては県警が策定した安倍氏の警護計画の甘さが問題となったことから、要員増や組織改編によって要人来訪時のリスク分析や態勢を強化する必要があると判断した。
県警関係者によると、現在県警本部では警備部内の警備、公安、外事の3課に所属する約100人の警察官が要人警護やテロ対策を担当している。
23年度はこの3課に他の部署から十数人を異動させ、人員を1割程度増やす方針という。
事件では、殺人容疑で送検された奈良市の無職、山上徹也容疑者(42)=鑑定留置中=が安倍氏の後方7~5メートルまで近づき、手製銃を2度発砲。
2回目に発射された銃弾が命中し、安倍氏は殺害された。警察庁は8月、当時の警護状況に関する検証結果を公表。
安倍氏の背後に気を配る警察官が1人しかおらず、その1人も途中で前方の聴衆を注視するようになった「後方警戒の空白」が、事件発生の主な原因だと結論づけた。
この反省を踏まえ、県警は要人警護に十分な人員を割けるよう、マンパワーを確保する必要があると判断。各警察署に所属する警護担当者への指導・教育も充実させる考えだ。
また、山上容疑者は、自身でインターネットなどから情報を集め、手製銃や火薬を密造して事件に及んだとされる。
こうした特定の組織に属さない「ローンウルフ(一匹オオカミ)」による事件を防ぐため、ネット上での情報収集も強化する。
さらに、警護に関する規則を定めた「警護要則」が事件後、約30年ぶりに見直され、これまで都道府県警任せだった警護計画の策定に警察庁が強く関与するようになった。
このため県警は組織改編で新たに「警衛警護室」を設け、警察庁との緊密な連携を図る方針という。
https://mainichi.jp/articles/20221228/k00/00m/040/157000c