大手ゲームメーカーの任天堂が、顧客から従業員への理不尽な要求を指す「カスタマーハラスメント」(カスハラ)があった場合は修理サービスを行わないと規約に明記した。
交流サイト(SNS)では従業員保護の姿勢を歓迎する声が上がり、専門家は「カスハラ被害が社会に認知され、共感を呼んだ。大企業が先陣を切り、他の企業にも良い影響がある」と評価する。
任天堂は10月、修理サービスに関する規定に「カスタマーハラスメントについて」という項目を追加した。脅迫行為や侮辱発言、長時間の拘束などを例に挙げ、交換や修理を断る場合があるとしている。
広報担当者は「これまで誠実に対応した積み重ねでお客さまに信じてもらえると思い、踏み切った」と話す。
カスハラはパワハラやセクハラと異なり、法律による規制が存在しない。厚生労働省は今年2月、企業向け対策マニュアルを作成し指針を示したが、強制力はない。
担当者は任天堂の動きに対し「各企業が毅然(きぜん)とした対応を取り始めたことは効果的だ」と評価する。
顧客対応の比重が大きいサービス業界では、カスハラに先進的に取り組んできた会社も多い。
タクシー会社の日本交通は2016年、運送約款にカスハラ対応の条文を盛り込んだ。規約に明記することで法的な対応が取りやすくなるという。
消費者心理に詳しい関西大の池内裕美教授(社会心理学)は「近年はSNSへの投稿でさまざまな業界でのカスハラ被害が可視化され、消費者の意識も変化している。社会に任天堂の決断を受け入れる土台があり、うまく時流に乗った」と分析する。
動きは幅広い業界に広がっている。首都圏を中心に展開するスーパー「まいばすけっと」(千葉市)では今年3月、店舗の全従業員にカスハラの有無を尋ねるアンケートを実施。
労働組合との協議の中で従業員から要望があった。今後、結果を踏まえて具体的な対策を検討するという。(共同)