甲府市で昨年10月、50代夫婦が殺害され自宅が全焼した事件で、殺人や現住建造物等放火などの罪で8日に起訴された甲府市の男(19)について、朝日、毎日など在京5紙が9日付朝刊で実名を報じ、匿名にしたのは東京の1紙だった。地元の山梨日日新聞も氏名を報道した。
今月1日施行の改正少年法は民法上の成人年齢が引き下げられたことに伴い、18、19歳を「特定少年」と規定し厳罰化。これまで禁じられていた氏名や顔写真の報道も、起訴後は可能となった。
甲府の事件は、検察当局が起訴した特定少年の氏名を公表した初のケースで、報道機関の対応が注目された。
各紙は紙面で実名、匿名を選択した考え方を示した。氏名を報じたのは朝日、毎日、読売、産経、日経。いずれも事件の重大性を理由に挙げた。
顔写真を掲載した産経は、被告が犯行を認めていることも考慮したとした。山梨日日は「地域社会に与えた影響の大きさなどを踏まえた判断」との見解を示した。NHKや民放各局も実名で報じた。
一方、東京は、改正法下でも、20歳未満は健全育成を目的とした法の理念を尊重し、これまで通り匿名報道を原則維持するとした。
起訴状によると、男は昨年10月12日、男性会社員=当時(55)=宅に侵入、男性と妻=同(50)=をナイフで刺すなどして失血死させた上、ライターオイルをまいて火を付け住宅を全焼させた、などとしている。(共同)