はじめに

本書では棋士になって2年目から3年目の対局を取り上げていただいた。中心になっているのは平成30年度の対局である。
平成30年度を振り返ると、成績としては45勝8敗。勝率8割4分9厘という数字を残すことができた。
前年度に比べて対局数がかなり減ったが、これは棋戦のシステム上のこともあり、数字的にはむしろできすぎと感じている。
前年度と比較すれば、1年を通して大崩れする場面が少なくなり、安定した力は出すことができたと思う。
朝日杯将棋オープン戦、そして新人王戦と2つの棋戦で優勝できたが、新人王戦はラストチャンスをものにすることができて幸いだった。
朝日杯は今年は本戦からの出場ということと、去年決勝の舞台を経験していて落ち着いて対局できたことが大きかったと思う。
半面、C級1組順位戦は昇級することができなかったし、タイトル挑戦にも手が届かなかった。順位戦に関して言えば、
9勝1敗という数字は満足できるものだと思っているが、タイトル戦については、手が届かなかったということももちろんだが、
タイトルに近いところまでもいけなかったのは自分としても少し残念だった。やはり、まだ力不足なのだ。
自分の将棋を客観的に見れば、未知の局面での形勢判断の精度を上げる取り組みについてはまだまだの部分を感じる。
トップの方々との対戦でも力の不足を感じた。技術的なことを言えば、自分は中盤で時間を使い過ぎる傾向がある。
時間配分、また読みと感覚のバランスをもっとうまく取れるようにしたい。これからも引き続き、形勢判断の改善を軸に実力を高めることが目標である。
 
令和元年5月 藤井聡太