バレ

 真希が剣を抜くと膝をつく宿儺。
「優太は逝ったか……お前も逝け」と真希が剣を振りかぶる。
 宿儺はすんでのところでそれを躱し距離をとる。
『徐々に、だが、しかし確実に、呪いの王は疲弊している――』と双眼鏡を覗く冥冥。
 真希が乙骨の目を閉じてやる。不思議と涙はでない。
 悲しくないわけではないが……自分もここまで壊れてしまったか、と小さく息をつく真希。
 立ち上がった宿儺が「首を刎ねるべきだったな」と告げる。
 真希の急襲は二つある心臓のうち一つを潰したに過ぎず、それによる影響は腕二本と腹の口が死んだだけ。今の状態でも余裕をもって高専サイドを全滅させられるとのこと。
 ただし五条ORカシモクラスがいれば話は別だがなと独白する宿儺。
 突然、虎杖が立ち上がる。
 それを見て全員の思考が一瞬止まる。
 確実に世界を断つ斬撃を食らったはずなに何故――と、皆がなるなか宿儺だけが虎杖の特異性に気付く。
 小僧は魂を知覚できるようになったことで自身の魂へも干渉もできるようになったのでは? それ故に人呪霊(真人)の術式と同じような効果を体に備えているのではないかと予測する。
 つまり物理的にいくらダメージを与えようと魂が無事なら問答無用で再生する。反転による治癒と思っていたものも実は魂を弄って元に戻していただけなのでは――
 宿儺の思考は虎杖の発言によりそこで寸断される。
「宿儺、おまえはマジでつええよ。でも、そんなあんたにも一つ致命的な弱点がある」
「小僧、貴様はあいも変わらずつまらんが、その発言が今までで一番つまらんな。まあいい、言ってみろ」
「……あんたの弱点は、俺を嘗めていることだ」 
 虎杖が顔の前でパンッと手を合わせる。
「人を 呪わば 穴二つ――領域展開『呪術廻戦』」
 虎杖本人、真希、宿儺が領域に飲み込まれる。
 次の瞬間、三者は地平線の果てまで墓が続く空間にいた。
 呪力を錬れない……いや、感じない? と不思議がる宿儺。
「ここでは呪力はつかえない。術式が、じゃない。この領域内では文字通り、誰でも等しく呪力が0になる」
 この虎杖の発言に宿儺の視線が真希を向く。
「だから貴様なのか」
「そういうことだ。あたしに呪力の有無は関係ない。さて、お前はどうだ宿儺」
「ふっふっふ。双方どちらかが朽ちるまで、己が肉体でのみの殺し合いを強制させる領域か。小僧、なかなかに人でなしではないか。今やっとお前のことを“面白い”と思えてきたぞ」
 虎杖が構える。
「俺は、全然面白くなんてねえよ」
 宿儺が大の字に両腕を構えて最終ラウンドへ突入。