子どもの頃、一緒につるんでいたダチで「ダニちゃん」という子がいた。
ダニちゃんはとにかくすごい男で、というかすごい悪食でなんでも食べる子だった。
ダニちゃんの特技は給食を全部混ぜ合わせ、ぐちゃぐちゃにして食べることで、
ご飯(もしくはパン)もおかずもデザートも牛乳まで、ひとまとめにして先割れスプーンで
ぐちゃぐちゃにかき混ぜ、イッキに食べることを日課としていた。

それからダニちゃんは虫も好物だった。飛んでいる蝶々やトンボを器用に捕まえ、
そのまま口に放り込んだ。俺が「美味いの、それ?」と聞くと「うまい」と言っていた。

そんなダニちゃんはクラスの男子からは羨望の的だったが、
女子からは圧倒的に嫌われていた。

ある日、俺とダニちゃんは「川口浩探検隊ごっこ」でマンホールの蓋をあけ、
下水道の探検に出かけた。下水道の中は暗くて臭く、
正直俺はすぐに逃げ出したかったが、ダニちゃんがずんずん進むので
仕方なく、ついて行った。ダニちゃんは肝の座った男だった。

やがて、地上に出るとダニ隊員が手に何か持っている。10個ほどのタニシだった。
「それどうすんの?」と俺が聞くと「食う」と当然のように答えた。
ダニちゃんは石でタニシを砕き、「美味い美味い」と全部たいらげた。

翌日。学校に行くと、いつもうるさいダニちゃんが元気なさげにしている。
でも子どもだから、昨日のタニシが原因だなんて夢にも思いつかない。
そして最悪の時はきた。