契約未更新選手もいる中…J2清水が新体制を発表。シュン監督「そいつらのためのサッカーをしようとは思っていない」新戦力にも覚悟を要求

今シーズンからJ2の清水エスパルスが6日、IAIスタジアム日本平で新体制会見を行った。

 山室晋也社長、大熊清GM、シュン監督、前監督のゼ・リカルド作戦コーチらが出席。山室社長は冒頭の挨拶で「シュン監督は常々、1年でのJ1復帰を掲げてないとおっしゃっていますが、プロである以上、上を目指して行きたいし、各自がシュンさんに言われた事を強く持って、野心を持って今シーズンを戦う」と、J1復帰への強い思いを口にした。

 昨年17位でJ2に降格。失意のシーズンとなった。シュン監督は昨年11月の就任会見で「学級崩壊しているチーム」と指摘した。それを踏まえ、山室社長はクラブの抜本的な体質改善に着手する意向であること、27年までの5カ年計画で3本の柱を掲げた。経営面は強固で安定的な基盤を構築し、5年間で売上高9億円を増やし、サポーターやスポンサーとのつながりをこれまで以上に強固なものとし、より地域に密着したクラブ経営で商圏を拡大していくと掲げた。

 大熊GMは今後、クラブが目指すスタイルを攻守で相手を上回る「アクションフットボール」と説明。意図的にボールを動かし、守備も意図したプレスでボールを奪う戦いを徹底。4種(小学校年代)からトップまで一貫性を持って共有していくと言う。その上で「ただJ1に復帰するのでは意味がない。強いチームになってJ1に戻らなければならない。そこはアカデミーも含めて」と昨年、プリンスリーグ東海に降格したユースも含め、強いエスパルス復活を目指していく。

 最期にシュン監督が演説した。目標に向けては「山室や大熊はこう話したが」と前置きした上で、今シーズンについて「まずはサポーターやスポンサーの信頼を取り戻す。プレーも結果も含めて。今のサッカーは進化している。攻撃だけ、守備だけで戦うのは厳しい。走攻守に加えて一致団結、用意周到、準備。全てが出来ないと勝てない。全てにおいてハードワークする」と指針を掲げた。

 スローガンは強い意志のもとで戦う意味を込めて「STRONG WILL」に掲げているが、指揮官はそれと同時に裏スローガンとして「ORANGE SOUL ONE GAME HARD WORK」を掲げた。これは「(クラブカラーの)オレンジの魂を持ち、1日、1試合に全力を尽くす」事を意味しており「J1復帰は考えていない。目標もない。今、俺の口から言えるのは、各々が相当な覚悟を持って、今シーズンを戦うということ」と強い口調で話した。

 新人を含め、加入8選手が登壇し、挨拶と意気込みを語ると、今季背番号も発表された。そんな中でFWチアゴ・サンタナ、MF鈴木唯人、松岡大起に日本代表GK権田修一の名前もあったが、いずれも6日現在まで契約非更新となっており「共に闘えるように交渉はしている」(大熊GM)状態だ。

 指揮官は「8、9、23、57番の人間達は今日か明日には空き番になるかもしれない。そうならない事を願って下さい」とジョークを飛ばしつつ、「そいつらのためのサッカーをしようとは思っていない。中にはしぶとく残った既存の奴もいるが、今日ここにいる奴らがいて、サポーター、スポンサーが支えてくれるからこそ、エスパルスが成り立つ。去年まではそれを蔑ろにした。やるのが嫌なら出ていけば良い。お客さんもエスパルスの為に戦ってくれる奴らと戦いたいに決まっている」とし、新加入選手には「常にエスパルス、静岡県を背負っている気持ちと思いを強くして、覚悟を持って戦わないと」と要求した。

 注目は9年ぶりに名古屋から復帰したDF吉田豊だ。シュン監督とは12年に共闘しており「まさか、またシュンさんとやれるとは思ってなかった」。左右のサイドバックをこなせるベテランDFは「覚悟を持ってエスパルスに来た。このクラブの事は気になっていたし、ここ(J2)にいるチームじゃない。自分も新人のつもりで、シュンさんに認められるように頑張る」とレギュラー奪取を誓う。

 山室社長は「今年は結果を出すことが1番の責任の取り方。ダメなら辞めなければならない事はシュンさんからも言われた。そこを担保して戦う」と背水の陣である事を明かし「昨年の降格があったから、エスパルスが生まれ変わったと、数年後にそう言われるシーズンにしなければならない」と覚悟を示した。今季はクラブ再建の第1歩となるシーズン。フロントも現場も強い意志のもとで1年を戦っていく。