甲斐武田は、戦後にはじめて信玄評伝を書いたのが奥野高廣氏。

考古から武田研究まで何でも手がけ、山本勘助探求でもしられる上野晴朗さんは郷土史家の趣が強い。
佐藤八郎氏は知名度ないだろうけど、漢学的素養のある一世代前の古典的知識人で、奥付とか絵画資料の賛文、
香語・聖教とかを活用した研究をしていた。戦後では古代史研究から転じた磯貝正義さんが大きい。
「武田信玄のすべて」とか、大河の監修もやったよね。このあたりは故人が多い。

今の大御所は柴辻俊六・笹本正治さんのおふたり。柴辻さんは図書館職員・古文書学の専門家で地道なライフワーク的に武田研究、
論文でもきちんと研究史を記して自身の研究の位置づけにも自覚的だし、冒険もしない。文書の集成にも携わっていて、大きな仕事をしている。

対する笹本さんは大学の先生で、網野善彦氏の影響が強いように思える。柴辻さんとは対照的に、ばんばん新説を打ち出していくタイプの人で、
やや実証性で難有りかもしれない。「山村史」の視点とかを持ち込んだ人でもあるね。

平山さんはもう中堅どころかな。平山さんの視点は、大名権力と在地社会の関わりであると思う。治水史とかも手がけている。
黒田基樹さんは武田氏の研究者でもあるよね。

一般的知名度はないと思うけど、今の武田氏研究会会長だったと思う秋山敬さんは大きい。戦後の武田研究はやっぱり三代期中心だけど、
秋山さんは上杉禅秀の乱以来の守護武田氏の大名権力確立と国人勢力をテーマに、ほとんど独業でそのテーマを開拓している。

あとは「新編武田信玄のすべて」で執筆している人が若手。鈴木将典氏は武田領国の経済史かな、丸島和洋氏は外交史。
山梨県立博物感学芸員の西川広平氏も、これから活躍していくと思う。武田氏系図の成立過程とかやってるよね。

というところ。