世界保健機関(WHO)は、大麻の害として、脳機能の障害(認知機能、記憶、知能)、呼吸器の障害(慢性気管支炎など)、生殖機能の障害、精神障害のリスク増大などを挙げている。加えて、大麻使用下での交通事故などの危険性も度々警告されている。
 このように、大麻は他の薬物に比べると依存性や害が小さいという知見があることはたしかである。とはいえ、さまざまな薬物のなかで比較的害が小さいからと言って、それをもって合法化するべきという理由になるのだろうか。大麻を合法化するならば、それよりも害が小さいとされるMDMAやLSDなども合法化すべきなのだろうか。
 一方、アルコールやタバコは合法であるが、これらの研究を見ると大きな依存性や害があることは間違いない。どれだけ国や専門家が注意喚起し、依存症対策を実施しても、依然としてわが国では2,000万人の喫煙者がいるし、1,000万人の問題飲酒者がいる。そして、それに伴う健康上の害、犯罪、事故などが多数発生している。
 この上、さらに別の薬物を解禁して、これ以上のリスクを増やす必要があるのだろうか。また、害の大きさだけを基準に議論するならば、逆にアルコールやタバコを非合法化するべきという議論のほうがより合理性があるようにも思える。