(ショーペンハウアー「幸福について」4 橋本文夫訳)

誇りというものが世間一般からは手厳しく非難され排斥されてはいるが、しかし私の推測するところによれば、それは誇り得る何ものももたぬ人たちからおこったことである。

大多数の人々の盲蛇に怯じぬといった風の厚顔無知に対抗していくには、
いやしくも何か長所のある人は、この長所がすっかり忘却されてしまうことのないように、みずからの長所を常に眼中に置くのが最も得策である。…

謙譲の美徳というものによれば、誰でもが拙者も碌でなしでございと言わんばかりの触れこみをしなければならないことになり、
そうなると世の中にはまるで碌でなししかいないように聞こえて、見事な画一化がおこなわれるわけだから、謙譲の美徳は碌でなしにとっては結構な発明である。