ルマ・ルセフ氏が大統領に選ばれた2010年、 
ブラジルはついにその巨大な潜在能力を開花しつつあるかに見えた。

 その年、ブラジル経済は7.5%成長し、ルセフ氏の政治の師で中道左派・労働党(PT)指導者の
ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ前大統領が進めてきた8年にわたる急速な成長と貧困率の低下は、
もはや間違いのないものとなっていた。

 だが、それから4年経った今、明るい見通しは消えてしまった。ルセフ政権の下で、経済が行き詰まり、
社会の発展は減速した。新興経済大国のBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国の中でも、
経済制裁に見舞われているロシアを除けば、ブラジルは群を抜いて低迷している。

 2013年6月には、100万人ものブラジル国民が街頭に繰り出し、お粗末な公共サービスと政治腐敗に抗議した。

 その抗議活動以降の世論調査では、回答者の3分の2が、次期大統領にはルセフ氏以外をと望んでいた。
そのため、10月5日に行われたブラジル大統領選挙の第1回投票で、ルセフ氏の敗北が予想されてもおかしくなかった。
だが、その投票でルセフ氏は41.6%の票を集め、10月26日に行われる決選投票でも、僅差ながら、なお本命視されている。