【開山前に「富士山」の山小屋はすでに“ほぼ満室” 徹夜で山頂を目指す「弾丸登山」で遭難者急増の可能性も】

弾丸登山の懸念はこれまでたびたびネットニュースなどでも報じられてきた。それに対して「泊まらずに登られるから山小屋は困るのだろう」という、心ないコメントも目にした。しかし、それは違う。
「弾丸登山もそうですけど、『登山は自己責任』って言われるでしょう。でも実際は、遭難が発生したら、山小屋の従業員が助けに行かなければならない。
だから、弾丸登山者が出ないように、要望書を手渡したわけです」と、中村山小屋組合長は説明する。
山小屋は単なる宿泊施設ではなく、遭難救助の初動を担ってきた。街なかと違い、遭難者が救助を要請しても県警の山岳救助隊などが現場に駆けつけるには、ある程度の時間がかかるからだ。
「登山者が歩けなくなった」という山小屋からの通報で救助されるケースも珍しくない。
富士山で救助を要請しても救難ヘリが飛来することは少ない。国内の山のなかでは富士山の標高は圧倒的に高く、空気の密度が低い(特に気温の高い夏場)。
そのため、救難ヘリが現場上空でとどまることは難しく、人力による救助が基本となる。
昨年の夏山(7~8月)で発生した遭難は全国で668件。県別で見ると、日本アルプスをいだく長野県での遭難が最も多く、100件。それに続くのが静岡県の55件で、その大半は富士山で発生した遭難である。