時々ギルドの正体を探ろうとする者もいたが、ことごとく行方知れずになった。所在が知れなくなった騎士について僕も王都に問い合わせた事があったが、聞いたこともない名だと、あしらわれてしまった。
僕の知る限り、ギルドはこの世を統べている。ギルドと揉めるという事は死よりも恐ろしい目に遭うと理解しなければならない。事実、祖父がこの記録を残した数日後ナ・ローシュと祖父は揃って置き手紙を残して旅に出てしまった。実際には、祖父はその日のうちに帰ってきて、いや僕の知っている祖父とは似ても似つかなかったのだけれど、家族は疑問を挟む事なく受け容れ“祖父”が亡くなるまで共に暮らした。

改めてナ・ローシュが語った「異界」の暮らしぶりを見ると、荒唐無稽というか気が触れてた人間のたわ言にも思える。最後に彼の独り言か「俺が教えられるものはなくなった、だからその地位を追われた」とある。最後までギルドと揉めた顛末は分からずじまいだった。