バチバチバチ……
にわかに、一角の周囲に無数の飛電が舞い踊る。
誰かが叫んだ。

「やばい、紫電の槍(ライトニングスピア)だ!」

眩い数条の雷光がほとばしり、慌てて目を腕で覆う傭兵たちの姿を一瞬浮かび上がらせた。
老騎士からすれば、まだ年端もいかぬ、あどけない顔の少年たちだった。

「しまった。逃げられた!」
「すぐに追うぞ!」

稲妻のように駆け出した漆黒の獣を、少年たちが追いはじめた。
と、殿を駆けはじめようとしていた白いローブ姿の少女が、ふと老騎士の方を振り返った。

「ねえ、みんな待って! この人、生きてる!」

薄れゆく意識の中で、老騎士は呟いた。

「イクシ……オ……ン」

その獣はユニコーンではなかったようだが、老騎士にとって瑞獣であることに変わりはなかった。