秋も深まり寒くなり出した頃、母親と一緒にデパートに買い物に行った。

当時俺は中二で、身長はすでに160を超えていたので、まずは紳士服売り場に行き、そこで冬物の毛糸のセーターなどを買い与えられた。

その後、階段を一つ下りた。そのフロアは子供服と学童品の売り場だった。周りにいるは小学生ぐらいの小さい子供ばかりで、中学生の俺がそこを親子連れで歩いているのは場違いなような気がした。

男児服のコーナーに行くと、もう寒い季節なのに、当たり前のように半ズボンがズラリと並んでいた。120サイズの可愛らしく小振りなものから、160サイズのでかめのものまで各種揃っていた。いずれも股下は三センチぐらいの定番の半ズボンだった。

俺は一枚の半ズボンのタグにある「12〜14才」という文字を見つけて、「これなら中学生の自分でも十分穿ける」と一人密かに思った。

女性店員が近寄ってきて、半ズボンを穿いた俺の剥き出しの太ももへ無遠慮な視線を向けた。そして、今度は俺の顔を見てニヤッと謎めいた笑いを見せた。

多分それは、「男の子はいくつになっても元気ね」とでも言いたかったのだろう。あるいは「そんな小さな半ズボンじゃあ窮屈だから、新しいのを買わないとね」という意味かもしれなかった。俺は変に照れてしまって、わざとぶすっとして不機嫌そうな顔でいた。

母親と店員がどれにするかを選んでいるのを後ろで眺めながら、俺の心の中では、「まだ半ズボンを穿かされるのか」という思いと、「これからも半ズボンを穿けるんだな」という二つの思いが交錯していた。