会社を辞めて起業といえば阿出川さんだ。
阿出川さんは大手パン会社を退職してパン屋を始めたわけだが、
言ってみればヤマザキパンやフジパンの工場で働いていた人が、なぜ町のパン屋さんに転身したのかが謎だ。
工場の機械と町パンの機械はまったく違うし、下積みが大事なパン屋を工場の人がやれると思ったとしたらとてつもなく甘い。
そもそも奥さんと出会った大手パン会社にそのまま勤めていれば安泰の生活を送れただろう。
問題はいったい誰がちゃんとした大人じゃない阿出川さんをそそのかしたかなんだよ。
奥さんは阿出川さんを見て、この人にまともなパン屋が務まると本気で思っていたのだろうか?
俺には阿出川家の不幸を見て見ぬふりはできない。