日本の個人投資家の意識が変わり始めた。今年から始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)のほか、日経平均株価の最高値更新もあり、将来に向けて「順張り」で投資する動きが広がる。けん引役は「Z世代」を筆頭とする若年層だ。デジタル化の加速で投資環境も様変わりした。新たな時代に向き合う個人に迫った。

「日本の将来が明るいというニュースを見聞きすることがない」。素材メーカーで働く男性(27)は、20年からネット証券を通じて米国株投信などに投資している理由をこう説明する。これまでに40万円投資し、残高は60万円に増えたという。「日本で働き、稼いだお金は米国で運用するというスタンスは今後も変わらない」と明かす。

多くの個人が投資に目を向けるのは、インフレの影響も大きい。円安の加速も相まって、生活の中で円の価値が日増しに目減りしている。少子高齢化の進展で将来もらえる年金が減る可能性は高く、「老後2000万円問題」を貯金だけで乗り切るのは困難な情勢だ。デフレから脱しつつある中で、老後の生活のために投資せざるをえない現実がある。