https://www.cinra.net/article/202211-thefirstslamdunk_iwmkrcl

『スラムダンク』がここまでの人気を獲得した理由は何か。最大の要因は、テレビ放送されたことにあると言える。当時はインターネットが一般に普及しておらず、テレビや雑誌が圧倒的な影響力を持っていた。さらに、アニメなどの娯楽作品は日本をはじめとする海外からの輸入が中心だった。国産のアニメが未発達だったからだ。

放送された時点で、中国人にとってバスケがすでに身近なスポーツだったことも大きい。NBAの大スター、マイケル・ジョーダンに憧れる子どもも多かった。つまり、娯楽が多くない状況で、バスケを題材にした、しかも連載開始から30年以上経っても衰えない人気を持つほどの作品が出現したのだ。「ほかに見るものがない状態で、いきなり『スラムダンク』が入ってきた」と冒頭の男性が語るように、当時の中国の子どもたちに与えたインパクトは計り知れないだろう。

中国でテレビ放送された日本産のコンテンツとしては、他にも『一休さん』『ウルトラマン』などがある。それぞれ世代ごとに高い知名度を誇るが、バスケブームという波に乗った『スラムダンク』は別格と言えるかもしれない。

中国では『スラムダンク』の放映に続き、2000年代に姚明(ヤオ・ミン)がNBAのヒューストン・ロケッツで活躍を見せ、バスケ人気を確固たるものにしていくことになる。

もちろん、時代的な背景のみならず、作品そのもののパワーもある。中国の動画プラットフォームの幹部は以前筆者に、中国には「四大熱血競技漫画」があると教えてくれた。『キャプテン翼』『ヒカルの碁』『タッチ』、そして『スラムダンク』の4作品(人によって入れ替わることもあるようだ)で、これらの作品に共通する「自分を成長させようとする姿勢」「ライバルや仲間との青春」などの要素が中国では重要なのだという。色恋目的でバスケを始めた桜木花道がチームメイトの流川楓や赤木剛憲とぶつかり合い変わっていき、仙道彰ら強敵たちと熱戦を繰り広げる様はまさに当てはまるだろう。