フジテレビのバラエティ番組 「退屈貴族」 で、面白映像の撮影を企画。
6年前、日本テレビの番組で放映された投稿画像で火渡りをしていた老人に、
同様の火渡りを撮影させて欲しいと出演を依頼する。

日本テレビで放映されていた投稿画像ではミカン箱をばらした木の板に火をつけ、
くすぶる板の上を同老人が歩くものだった。

しかし、「楽しくなければテレビじゃない」 のフジテレビは
スタッフが灯油 3リットルとライターを持参して、老人が持参したダンボールを芯に灯油を燃やし、
ディレクターの金子傑が、「お願いします」 と老人に猛火の中を歩かせた。

独り暮らしの老人は、久しぶりの訪問者に喜んだのか、
運を天に任せて、燃えさかる灯油1,000度の猛火の上を歩くが
数メートルを歩いて、熱さに耐えられず途中で脇に抜ける。

大火傷を負った老人は持参したオロナインを真っ赤にただれた両足に塗ったが、
足の裏の皮はめくれ、歩くことは出来ず金子傑らが背負ってタクシーに乗せ自宅に送った。

フジテレビスタッフ・金子傑らは大火傷を負った老人に2万円だけ渡すと
独り暮らしの家に、そのまま置き去りにして帰社。
金子傑らは、足の裏の皮がめくれた状態も見て大変な症状であることも判っていたが、
その後、なんの連絡も取らなかった。

老人は動けない状態が続いたあげく、事故から5日後に容体がいよいよ悪化し、
ぷるぷるふるえているところを兄に発見され、救急搬送された。

判明した火傷は足裏から太ももにかけて、
表面積の三割近くに最重度の三度という重篤なもので多臓器不全に陥っていた。

事件性を疑った病院は地元警察署に通報する。
警察は火傷を負った日時、場所と
「フジテレビのロケ」であること、担当者名を聞き出した。

翌日、警察はフジテレビに調査を依頼する。
その夜、老人の体温は34度まで低下。
意識不明の状態が続き、危篤に陥った。

5日後、フジテレビは、担当者名が判っていたにもかかわらず、
「調査したが、該当する様なロケは行っていない」と回答。
警察はそれを鵜呑みにし、「フジテレビのロケ」は老人の虚言と判断。
事件性はないとし、自傷事故として処理した。

「該当するロケはない」と答えた翌日、フジテレビのスタジオでは
老人の映像を使用して、収録が行われた。
老人の映像には、老人を小バカにし、笑いものにする編集が行われていた。

病院では老人に表皮を移植する手術などが繰り返された。
しかし、呼吸の一時停止、胃の複数ヵ所からの出血、吐血。
肺には水が溜まり、臓器不全に陥るなど、重篤な症状が続いた。

フジテレビスタッフは大火傷を負ったまま独居に放置してきた老人の様子について、
その後、一度も問い合わせすることなく、
撮影から1ヶ月半後、フジテレビ「退屈貴族」の番組内で、
退屈をしのぐ映像「東洋のランボー」と題してテレビで放映した。
放映中も、老人は生死の境をさまよっていた。

老人を茶化したり、小バカにしたナレーションと共に放映した画面では、
高さ1メートル、腰まで火が燃えさかり、
老人が下半身に大火傷を負ったことは誰の目にも明らかだった。

5日間の調査でも、また放送後もフジテレビは事故を発見出来ていなかった。
しかし、番組を見た視聴者から「やりすぎ」の苦情が相次いだことから、
フジテレビは、ようやくロケの事実を認める。