つんく♂の歌詞が持つ普遍性。なぜ「つんく♂の心には思春期女子が住んでいる」といわれるのか
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ハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)のグループおよび楽曲、特に、つんく♂(49)提供の楽曲は同性からの支持を多く集めている。実際、ここ数年のハロプロは女性ファンの動員を増やしていて、ライブ会場には10代~20代の女性も数多く見受けられるようになった。また、その歌詞は「言葉」を生業にする作家からの評価も高く、朝井リョウ(28)、柚木麻子(36)、石田衣良(58)など、つんく♂の書く歌詞へのリスペクトを表明する文筆家は多い。そんな作家のひとりであるイラストエッセイストの犬山紙子(36)によるこんなツイートが話題となった。


〈つんくさんの歌詞は、女の子にこうあって欲しいというおっさん目線じゃなくて、女の子本人に寄り添ってるから最高〉(4月12日の投稿)

 彼女がこのようなツイートをした背景には、「先生と生徒の禁断の恋」を描いたAKB48の新曲「Teacher Teacher」の歌詞が「スクールセクハラを肯定しているのでは?」と、ツイッターで話題となった一連の騒動があるのだろうが、では、なぜ、つんく♂の歌詞は〈女の子本人に寄り添ってる〉ものになっているのだろうか?

 その秘密を解き明かすヒントが、2018年1月20日放送『SWITCHインタビューの達人達』(NHK Eテレ)での、マツコ・デラックス(45)とつんく♂の対談のなかにあった。この番組で、つんく♂は、自身が提供した歌詞の根底には「寂しさ」が流れており、それは、男女関係なく、心のなかに持っているものだと語っている。

『SWITCHインタビューの達人達』でマツコは、つんく♂楽曲で一番好きな曲として、EE JUMP解散後のソニンのファーストシングル「カレーライスの女」(2002年リリース)を挙げる。この曲は、女性が終わってしまった恋を振り返りながら、〈台所に立って/あなたの大好きな料理/私がはじめて覚えた料理/たったそれだけだよ/今の私はそれが全て/東京に来てからの全て〉と歌うものだが、つんく♂はこの曲についてこのように語っている。

「当時、ソニンは本当に真面目な子で。多分、恋とか愛とかないような子で。地方から東京に出てきて、就職して3、4年経ったけど、『私に何もないやん!』って、後輩見ていて思うOLみたいな。そんな感情が乗り移ってきて、『ちょっと恋愛したけど、私に何もない。でも、唯一、そういえば、たまに作ったカレーは美味しいって言うてくれたなぁ。その時はめちゃ幸せやったなぁ』って、そういう日曜のサザエさんが流れてくる時の寂しい気持ちを曲にした。俺ら男性でも感じる、一人暮らしの寂しさを悲しく表現した。『シングルベッド』も同じ。『LOVEマシーン』は1人の寂しさを楽しく仕上げた。『ザ☆ピ~ス!』も同じ。(楽しく仕上げるか悲しく仕上げるか)どっちかだけど、中身は同じなんだなぁって」

確かに、すでに終わってしまった恋を振り返って悔恨を抱きつつも前に踏み出そうとする点で「シングルベッド」も「カレーライスの女」も同じ内容を描いている。「LOVEマシーン」や「ザ☆ピ~ス!」のなかにも「寂しさ」が入っているとはにわかには信じられないが、確かに、〈どこにいたって愛してて欲しいは自分で伝えるの恥ずかしいじゃない!〉(「LOVEマシーン」)や〈久しぶりだぜふるさとには再来週帰ろう〉(「ザ☆ピ~ス!」)など、どこか「満たされなさ」であったり「郷愁」であったりを感じさせるフレーズが入れ込まれている。

 つんく♂が喉頭がんの闘病を振り返った自伝『だから、生きる。』(新潮社)の文庫版解説のなかで、朝井リョウはつんく♂作品に惹かれる理由を〈「作り手としての情動が核にある」と感じられることがとても多いからである〉と綴っている。