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 直近の収支報告書(一四年)によれば、「自民党東京都支部連合会」の収入総額は約十億円。この十億円が「内田氏が
差配できるカネ」(同前)という。都連のカネで自らのパーティー券を購入したり、自身が代表者を務める政党支部に
厚く支出したりもしている。「年末の総会では、党本部から所属議員に配られる餅代・氷代(活動資金)の報告があり、
『内田先生のお力添えでもらいました』とアナウンスされる。すると、議員たちは内田氏にお礼の挨拶に行くのです。
一方で、内田氏は対立する議員を徹底的に干す。自殺した樺山氏もそうでした。品川区選出の有力都議も内田氏と衝突し、
最終的に引退を余儀なくされました」(同前)
 内田氏の権勢は、その集金力からもうかがい知れる。
 収支報告書(一四年)によれば、内田氏が代表者を務める政治団体は内田茂後援会、自民党東京都千代田区第二支部、
自民党千代田総支部、世界一の東京をつくる会の四つ。その収入総額は約八千万円だ。「都議会で内田氏に次ぐ実力者」
(都連幹部)という高島直樹都議が代表者を務める二つの政治団体の収入総額は約千三百万円。内田氏の資金力は群を
抜いていると言える。
 大きな収入源となっているのが、恒例の政治資金パーティーだ。例えば、内田茂後援会は一四年十一月に政治資金
パーティーを開き、約一千万円を集めている。「国会議員並みの集金力でしょう。内田氏のパーティーには大手から
地元の中小企業まで、建設会社や不動産会社が勢揃いする。実は、内田事務所の女性秘書は千代田区でまちづくり政策
が専門だった優秀な職員。彼女を事務所に引き抜き、内田氏は都の再開発を主導してきました。その代表例が、大丸有
(大手町・丸の内・有楽町)地区の大幅な容積率緩和です。容積率を緩和すると、高いビルも建てられる。そうすれ
ば建設会社や不動産会社も潤う。そして、彼らは内田氏を支援するという構図です」(同前)
 内田氏ら都議会が大きな影響力を行使できるのは、約七兆円という巨額予算を誇る都政だけではない。
 東京で開催されるオリンピックにも、内田氏の影が見え隠れする。「五輪組織委員会理事の都議枠は、二人とも内田氏
の側近議員です。舛添前知事が五輪会場の見直しを宣言した時も、内田氏率いる都議団は猛反発していました」(同前)

■監査役の企業は売上急増

 内田氏は、落選中の一〇年から地元・千代田区に本社を置く東光電気工事の監査役に就任した。内田氏の所得等報告書、
関連会社等報告書を総合すると毎年数百万円の役員報酬を受けているとみられる。
 東光は、大手建設会社などとジョイントベンチャー(JV)を組み、今年一月、バレーボール会場の「有明アリーナ」
(落札額・約三百六十億円)、水泳の「オリンピックアクアティクスセンター」(約四百七十億円)の施設工事を落札。
東京五輪に向けては三つの恒久施設が新築されるが、このうち二件を東光のJVが受注したことになる。
 特に、有明アリーナの競争入札では、東光のJVの入札価格は、ライバルのJVより高かったが、施工計画などの技術点
で上回り、落札に成功。専門紙の建設通信新聞も〈逆転落札〉(一月十八日付)と報じたほどのどんでん返しだった。
 東光は、五輪施設だけではなく、豊洲新市場の関連工事など、都発注の工事もたびたび受注。売上高は、内田氏が復活
当選する一三年までは七百億円前後だったが、一四年には約一千億円へと急成長しているのだ。
 日本大学の岩井奉信教授はこう指摘する。
「内田氏は都の予算に大きな影響力を持つ人物。条例等で禁止されていないとはいえ、五輪関連工事を受注するような
企業の監査役を務めていること自体、望ましい話ではありません」
 今や都議会に君臨する内田氏は、神田淡路町で四人兄弟の長男として生まれ育った。地元の九段高校に進学したが、
同級生は「頭は良かったが、タバコを吸って不良ぶっていた。部活は柔道部。同窓会で中退の理由を『意見の合わなかった
担任を殴ったから』と言っていた」と振り返る。
 内田氏の公式プロフィールでは、一九五六年に中退して以降、七五年に千代田区議選に初当選するまでの約二十年間が
「空白」だ。「中退後、内田氏はテキヤに出入りして、世の中の“裏側”に接していたようです。今でもテキヤの親分は
『露店の陳情で頼れるのは内田氏だけ』と言っています。同級生の経営する電気屋で働いたり、喫茶店の店番をしたり。
神田の雀荘にも入り浸り、自ら雀荘を経営している時もあった。長男の不良ぶりに、内田氏の母親も『茂だけが出来損ない』
と嘆いていました」(内田氏の親しい知人)