>>219

ブリードでもWDの形を維持することは可能だと思います。ずんぐりしたパラワンの方向が累代によって進めば羽化不全になると思います。
以下私の飼育について主観を交えた個人的な考え方です。長文になりますので、興味のない方はスキップしてください。

養蚕で使用されるカイコガは胴が異常に太く、飛ぶことはできず、歩くこともままならない、自然界には存在しない虫です。
長い養蚕の歴史の中で、人間がブリードによって作り出したものですが、カイコガの胴の巨大化はここ100年くらいの間で特に進んだもののようです。
パラワンもひたすら幼虫の巨大化を進めていけば、胴が異常に太くなり、カイコガ化が進むに違いありません。
カイコガの場合は糸をたくさん出せば良いので、胴の巨大化は問題ありませんが、パラワンの場合は羽パカになって見るに堪えないものになってしまうでしょう。
ずんぐりしたパラワンはカイコガ化の初期症状ではないかと思います。
それでは、これをどう防げば良いかということですが、鍵は「余裕をもったブリード」にあると思います。
とにかく幼虫をデカくしようとして、ひたすら大きな種親を選び、たくさん添加剤を加え、幼虫のグラム数増加に一喜一憂し、人工蛹室まで用いて羽化までなんとか持って行くというガリ勉型ブリードでは、
頭でっかちならぬお尻でっかちのカイコガ化進むに違いありません。
2年前、能勢YG血統を作り出した鶴原氏からブリードについての基本的な考え方についてお聞きする機会がありました。
鶴原氏は、どっしりとしたオオクワギネス86.6ミリと別ラインの少し華奢な85.5ミリを見せてくれました。
そして、「どちらが種親として有望だと思いますか」と質問してきました。
鶴原氏によると、86.6ミリはすでに完成形で、これ以上は伸びないのではないか、85.5はまだまだ伸びしろがあるのではないかということでした。
鶴原氏の基本飼育コンセプトは、個体で考えるのではなく、ライン全体で考えるというもので、大変参考になりました。

蛹室が壊れそうになりながらも、なんとか羽化した109ミリの♂がいたとします。お尻が大きく、羽にはシワがよっています。
後食にも時間がかかり、羽化から半年経っても動きが少し緩慢、そんな個体です。
一方、しっかりした硬い蛹室を作り、余裕で羽化した107ミリがいます。天然パラワンのように、アゴが伸びて、背中は綺麗で、シワ一つなく、後食開始も早く、4ヶ月もすれば、
機敏な動きで獰猛に飛びかかってくる。
種親にするとすれば、どちらかということです。
次の世代だけを考えれば、109の仔の方が大型が望めるとは思いますが、これを続けていけば、まちがいなくカイコガ化が進むに違いありません。
飼育技術をとにかく幼虫をデカくする技術だと勘違いしている人がいますが、クワガタに限らず、どんな生き物の場合でも、一流のブリーダーは、ライン全体の健康と、進化を考えているのではないでしょうか。
累代が進めば進むほど健康になり、より生命力が強くなっていくようなブリード。
そのようなブリードが天然に近い生命力を生み出し、最終的にはギネスサイズを生み出すのだと思います。
同腹をかけない。
健康で、余力のある個体を種親に選ぶ。
♀の健康に特に気を遣う。
偶然に出てくるスーパー個体だけでなく、ライン全体の生命力を向上させるように心がける。
あまり添加物に頼らない。
複数ラインを管理し、血が濃くならないように相互に掛け合わせていく。
5年くらいの単位でゆっくり気長にラインを成長させていく。
私はそのようなブリードを心がけています。
天然に近いフォルムはラインの健康状態の指標だと考えます。
産卵数が少ない。ブヨブヨ病が続出する。
途中で死亡する幼虫が続出する。
羽化不全が多発する。
無事羽化しても、ヘドロ化した蛹室で瀕死の状態。
羽化した大型個体もずんぐりしてお尻が大きく、なかなか引っ込まない。
そのようなブリードには未来はないと思います。