電力業界と鉄道業界の結びつきは面白過ぎますよね。
時期にもよりますが資金調達能力は電力業界の圧勝であることが多い。
戦前の電力会社が弱肉強食で競っていた時期にも、陸上交通の王者であるはずの鉄道会社を圧倒します。
電力=ライフラインと輸送業界では収入構造が全く違うのでしょう。
電力業界は副業で電鉄経営しますし、発電所を作るために線路を敷きます。

この、発電所建設のための線路ですが、電力業界からみれば使い捨て出来てしまいます。
実際に使い捨てた実例が複数見つかっています。典型が、草軽のL型電機が輸入時に使われた軌道。
草軽が大変に有名ですので遡って調査されておりますが、地図に載る暇もなく廃線になっています。
鉄道業界から見ると、電力業界の需要は最大瞬間風速です。短期間に膨大な貨物を輸送して途絶えてしまう。
地方私鉄が巻き込まれた典型が松本電鉄上高地線でしょうか。儲かったとも言われますが松電の設備投資額も大きい。

使い捨て出来るほどの資金力を振るって、工事完成後に不要となった路線。
この鉄道をなんとかして永続的に維持したい地元などの関係者の振る舞いが、非常に面白い。
そもそも地元には地方私鉄を作る資金力などないのです。
特に山間部では軌道の存在は奇跡に等しいのですから、払い下げを受けたりして自主運営したケースが見いだされる。

揖斐川上流部はイビデンがダムを含む発電所を、かなり早い段階から建設しています。
この資材輸送に軌道がつかわれ、建設終了後に地元に移管され運営されているのです。
そんな場所に鉄道など、かつて報告されたことはないと思います。もちろん地図でも見当たりません。
法的に鉄道でもなく、森林鉄道などで管理もされていないので公的な資料がない。
起点と終点さえわかりません。現地には当時の古レールが使われた柵があるらしいのですけど。

下野電気鉄道もそうした電力会社の残した路線の、典型の一つでしょう。
莫大な資金力で暴れ川に架橋して、あとは欲しければ差し上げるから頑張ってね、という展開ではないか。
路線維持は大変だったかと思われます。
東武が来る前に水害一つあれば、鬼怒川線は随分と様相を変えていたことでしょう。