両耳の付け根の後ろに出っ張っている骨がありますが、そのあたりに全力で意識を集中します。遠くでかすかに聞こえる物音を聞こうとする時、思わず片方の耳を音のするほうへ向け、息を飲み込んで聞こうとします。そのくらい意識を集中しますと、やがて耳の先の方も敏感になってきます。

 次に耳の先と耳の付け根と後頭下部の脳戸のあたりを意識します。そうすると、だんだんと耳に鉛筆を挟んだような感じがしてきます。

 やがて片方の耳の先が動くような感じがしてきます。さらにつづけていると、他方の耳の先にも同じような感覚が現れます。次に耳の先と耳の付け根を、後頭下部の中心部を引き付けるように意識していると、後頭下部全体も左右の両側から後頭下部の中心部に向かって引き寄せられるような感じが出てきます。

 さらに、後頭下部を動かそうと練習を続けていますと、やがて後頭下部と額がつながったような感じがでてきます。そうすると額のツボ「印堂」が活性化したような感じがしてきます。その感じは温かさではなく、額がシーンとした、爽やかな感じ、涼しい感じです。

この額の感じは今までに経験したことのないものです。まるで頭の中にこもっていた熱が額から放出されるような感じでもあります。また脳が活性化したようでもあります。

 「頭寒足熱」の「頭寒」とはこのような状態をいうのでしょうか。「上虚下実」の「上虚」は上半身から余分な力や緊張を抜くことですが、これで頭頂まで「上虚」になったような感じです。

 ついでながら、「頭寒」には、「心が清く明るい」ことが大切なのはいうまでもないでしょう。怒ったりイライラしたりすると、頭に血がのぼるともいいます。

 風邪をひいて高い熱を出した時には額を冷やしますが、額は、普段からも頭の熱を逃がす大事な放熱板の役割をしているのではないでしょうか。

 頭のツボが活性化したときの感覚とは、爽やかな感じ、涼しい感じのようどす。こうなると、頭頂のツボ「百会」のオーバーヒートによるズキズキした不快感も出にくくなります。

 また丹田に腹圧をかけ、丹田と水落ち下を押してみると、額にある感覚が現れます。どうやあら額の活性化で、額の上丹田、鳩尾の中丹田、下腹部の下丹田の3つがつながるようです。

 頭に後頭下部と額をつなぐ回路があるかどうか分かりませんが、頭の中は後頭下部と額の回路がつながったような状態になって頭の力が抜け爽やかな感じになります。額と頭頂以外のツボは活性化すると、温かくなりますが、頭のツボが活性化すると、シーンとした爽やかな涼しい感じがするのです。