>>113
→最も苦痛なのは、「徒党」の一味の馬鹿らしいものを馬鹿らしいとも言えず、かえって賞讃を送らなければならぬ義務の負担である。
「徒党」というものは、はたから見ると、所謂「友情」によってつながり、十把一からげ、と言っては悪いが、応援団の拍手のごとく、まことに小気味よく歩調だか口調だかそろっているようだが、じつは、最も憎悪しているものは、その同じ「徒党」の中に居る人間なのである。
かえって、内心、頼りにしている人間は、自分の「徒党」の敵手の中に居るものである。

 自分の「徒党」の中に居る好かない奴ほど始末に困るものはない。それは一生、自分を憂鬱にする種だということを私は知っているのである。

徒党について 太宰治