「一人当たりの出生率」は、実は「曲者」である。
エリア外から出産期にある女性が横滑りで追加される、またはエリア外にそのような女性が出て行く、という条件が加わると、
「1人当たり指標にすぎない出生率」の高低や変化のみでエリア内の人口(出生)の増減を推計することは困難となる。

前年とは別の構成員からなる母集団女性が1人あたり生涯にもつ子どもの数の比較となってしまうからである。

カナダの出生率は1.3~1.4と低位であるが、出生数は維持され続けている。
出生減していないにも関わらず低出生率である理由は、カナダ国外から新たに追加される出産期にある若い移民女性が国内の未婚率を引き上げ、
既婚者率を引き下げるからである。

若い未婚女性が東京に流入して、東京での未婚割合が高まると、女性1人当たりの子どもの数は引き下げられる。
その一方で、東京では、若い未婚女性の人口母数は増加するので、それらはいずれ出産を迎え、東京の出生数は20年間ほぼ変化していない。

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そもそも出生率が下がる要因に、エリア外からの未婚女性の流入があること、
出生率が上がる要因に、そのような女性のエリア外への流出がある、
という因果関係を理解していないと、誤った政策判断をしかねない。

この因果関係が理解されていないと、
◆未婚の若い女性がエリア外へ大量に出ていったことでエリア内の既婚率が上昇し、「数字上のカラクリで一人当たりの出生率が上がったにすぎない状態」を、
まるで人口増加の兆しのように解釈してしまうというリスクが発生する。

◆逆に未婚の若い女性がエリア内に転入したことでエリア内の未婚率が上昇し、「数字上のカラクリで一人当たりの出生率が下がったにすぎない状態を、
まるで東京の女性は子供を生まないかのように誤って解釈するリスクが発生する。

なぜ東京に限らず都市部の女性の出生率が低いのか?
これは単に、未婚の若い女性がエリア内(都市部)に転入したことでエリア内の未婚率が上昇し、
若い未婚女性の数が増えるから、数字上のカラクリで、「一人当たり」の出生率が下がるにすぎない。