劉裕が長安を陥落させた後のこと。夏の赫連勃勃に和親を求める使者を立てた。
使者からの書状を読んだ勃勃は名文家として名高い中書侍郎の皇甫徽を召して雷のような大声で命じた。
「おい、貴様の名文を見込んで頼みがある。机と紙と筆を用意してやったから今すぐ返答を書け!俺様が暗記できるよう工夫しろ!」
皇甫徽は机に向き合うと筆を執って勢いよく書き出した「陛下、これでいかがですかな?暗記できるよう要点をまとめてあります」
勃勃はひったくるや一通り目を通した。そして、皇甫徽の手をとって感謝した
「素晴らしい返答だ!さすがは俺様が見込んだだけある!劉裕の野郎に一泡吹かせられるわ!」

翌日、劉裕の使者を引見した赫連勃勃は神妙な顔をして
「ご使者、遠路はるばるご苦労である。私は何分無学だ。口頭で言ったことを書記官に記録させる。これを劉裕殿の返答としたい」
と告げた。そして、勃勃は皇甫徽が書いて暗記した内容を滔々と述べた。書記官が記録したものを返答として使者に持ち帰らせた。
劉裕は赫連勃勃の返答を読むと唸り声をあげた。
「赫連勃勃は血生臭い野蛮な男と思っていたが…。このような素晴らしい見識を澱みなく言えるとは。赫連勃勃、つくづく只者ではない!」
これ以降、劉裕は赫連勃勃に一目を置くようになったという。