日本とモンゴルの交流が盛んになるなか、モンゴル留学生や日本の著名人が「蒙古」という言葉の
使用をやめるよう呼びかけている。「蒙古」には「無知で古臭い」といった意味があるためで、
大相撲のモンゴル力士たちも支援している。

このほどモンゴル留学生会などが主催する祭典「ハワリンバヤル2007」が開かれた都内の会場で、
「私たちはモンゴルを蒙古と呼びません」というパンフレット(意見広告)が来場者に配布された。
両国の賛同者による合同声明の形で意見を掲載。大相撲の安馬も賛同の署名を行った。

「蒙古」には「無知で古臭い」という意味のほか、「暗い、覆いかぶせる」という内容があるという。
東京外大モンゴル語学科教授で日本モンゴル学会理事の二木博史さんは「蒙古という呼び名は漢民族が
できるだけ野蛮な表記にしようとしてできた言葉。モンゴル人を蔑視(べっし)している。原則的に
民族名や言語の名前はカタカナ表記にすべきだと思う」と訴える。
日本人の「蒙古」という呼び名は鎌倉時代から始まったといわれる。かつて大阪外大は蒙古語学科を
設けていたが、1962年にモンゴル語学科に変更した。NHKでは2001年3月14日放映の
「その時歴史は動いた」で、蒙古は差別的な意味を持つとして「蒙古襲来」を「モンゴル襲来」として放送した。
しかし、現在でも多くの大学や団体などで「蒙古語」と呼ばれ、「日蒙辞典」や「訪蒙」として使われている
ケースも目立つ。中学、高校の歴史教科書には元寇の「蒙古襲来」の表記が残り、赤ちゃんのお尻をさす
「蒙古斑」も使われている。関係者は史実や慣例語は基本的には問題にしない方針で、できれば使わないで
ほしいという姿勢だ。

ただ、この運動を難しくしている問題が存在する。中国への配慮だ。中国は少数民族としての蒙古族と行政区
としての内蒙古自治区を有する。中国では当たり前のように「蒙古(モング)」と呼ぶ。蒙古の名前がついた
製品もある。モンゴル留学生たちは「呼び方変更運動は決して政治的なものではない。民族主義的な発想でもない」
として中国を刺激することを避けようとしている。
日本モンゴル協会長で早大の吉田順一教授は「中国には蒙古を使わないでという要望はできません。日本人への
啓蒙という意味で静かに運動していくつもりです」と話している。

[産経新聞](2007/06/13 06:22)