忘れもしない昭和59年の2月
バイト先の27歳の女性から、当時まだめずらしかったゴディバのチョコレートをもらった
「ねえ、知ってる?このゴディバっていうのは女の人の名前で、人びとを助けるために裸で馬に乗ったのよ?」
気味が悪くなったので生返事をして儀礼的なお礼だけした
バイトが終わって帰ろうとしたら、その女性が出口に立っていた
「〇〇君、今日はこれからどうするの?」
家に帰ってレポートを仕上げないと、とウソをついてその場をしのいだ
それからバイト先でその女性をなるべく避けた
その女性はその女性で私を敵視するようになり、そんなこんなでなんとなく距離をおいて、私はそのバイトをやめた
二十になろうかという男にとって、27歳の女性はあまりに縁遠い存在だった
その後『ノルウェイの森』がベストセラーになって、くだらない小説だなと思ったけど「レイコさん」のくだりでその女性を思い出して背筋がゾッとした
そのバイト先の飲み会で撮った写真が最近出てきて、その女性が写っていた
今見ると結構なメガネ美人で、今なら余裕でやれると思った
あのとき、やっとけばよかった