京都西陣に、知る人ぞ知る老舗パン屋がある

名前は公表できない、てか名前はない、個人の店で強いて言えばその職人の名前だが
ふつうは西陣の「あのパン屋」で通ってる

扱うのは、角食のみ、3斤分の大きさ、それ1つ
注文はおなじみさんのみ、どんな人からの紹介でも今は断っている状態
なにせ高齢の職人がひとりでやってるから、1日30本限定なので
直接店(といっても、外見はふつうの町家で、表札にもパン屋の表示すらない)に行って、
お金を払い、翌日午前までに取りに行くシステム
不定休 種を仕込むのが前日なので、行けそうだと思ったら注文を受けるし、
ダメだと判断すると、種自体を捨ててしまう

値段が2万円+消費税
桐箱入り なぜ桐箱かっていうと、あまりに柔らかいのと、焼き上がりからの湿度調整を
失敗すると、腰折れで食べられなくなるから

桐箱は使いまわしてもいいので、注文時に持っていくとその分を引いてくれる

粉は丹波篠山で職人の親戚が作ってる江戸時代から作っている小麦品種の流れをくむ、
阿波1号というもの、肥料からして有機認証がとられている大豆から絞った油かす、有機栽培の
米をとった藁からつくった藁灰等、こだわって作られたもの

それを、1粒づつ目視で選定して、300年以上使っている現地の水車小屋の石臼で低速で粉にしたものを
3日おきに送ってもらっている

酵母は伏見の酒蔵から採取したものからパン作りに適した酵母を選んだ天然酵母、
塩は島根で、昔ながらの塩浜塩田で作った海塩、水は、京都のある神社境内内にある
神泉から、職人が毎朝4時に起きて、うがい手水、ふんどし一丁で水垢離を取った上で
神職のお祓いを頂いた上で汲んできたものしか使わない 
汲むに際しては伊勢神宮の式年遷宮に際して下賜された神木から作った柄杓を用い、
鎌倉時代作と伝わる備前大瓷に入れて持ってかえる

材料は、上記の小麦粉、塩、酵母、神水、これだけ
それを、西陣に江戸寛永年間からとされる楽焼用の登り窯で焼く
薪ではなく、煙も臭いもでない備長炭で短時間かつ超高温で焼くので、
環境規制が厳しい京都の街中だが、特別に許可されている

焼き上がりのできたて時には、小麦と酵母の芳醇な香りで満たされる
口当たりはあっさりしているが、口の中いっぱいに小麦の旨味が広がり、
いくら食べても食べ飽きることがない

桐箱に保存しておけば、大体2日はそのままで行ける
だけど3日目以降は、トーストとしてのお楽しみが待ってる
カリっとした焼き上がり、サクサクと食べ進んで、そのままでもいいし、バターや
ジャムその他との相性もばっちり